ロイは…私に将軍になってほしいと願っているのか…。
それはどういう気持ちなのだ?
ハイネ殿下の王妃になってほしくないからか?
騎士としての私を評価してるからか?
ロイの気持ちが未だにわからない…でも今は自分の気持ちが一番わからない…。
「そうか…俺とミネルバを『死んだ者』として扱ってくれるのはこんなに気楽なことはねぇな。
これでミネルバは俺が名付けてやった『ミランダ』として生きていける!」
「皆様、本当にありがとうございます。
宮殿から出たことのない私が、簡単に漁師の妻が務まるなどと思ってませんが…。」
「ロイ、最期に俺からのはなむけだ!
世界中の海を見てきた俺なりの『大破壊』を聞かせてやるよ!」
「ジオン兄さんなりの…?」
「お前がこれに囚われてる限り、待ってられない人間達が迷惑し続けるんでな!
俺の言葉を『世界の真実』なんて思うな。あくまで『他人が集めた事実』と受け止めろ!
お前は考古学者だからな。
真実の追求を哲学者か宗教指導者に任せときな!」
「…はい…!」
****
「お前達は不思議に思わなかったのか?
世界は広い!
我が国より南に行けば行くほど豊かな大地が広がっている!
交易のあるブリテン島やユトレヒト半島よりもまだまだ南に行けばもっともっと陸は広がる!
だが…こんな北の僻地の我が国々ほど近代化した国はない!
いや、少なくとも俺が航海した範囲では見たことがねぇ!」
「その発展は両国の国家と国民の努力の賜物では?」
「俺だってそう思いたいさ。
だが、これを『大破壊』に重ねると、北の僻地にあるアスガルドの大地だからこそ、俺らのご先祖は生き延びれたと考えられないか?」
「それはつまり…スールシャールとリーセの『寒さ』が大破壊の被害を軽減出来たと?」
「あぁ、大破壊が旧世界の大戦争か天使軍団の襲来かはわからない。
だが、大破壊を生き延びた人間が、あらゆる地域からこの北の大地の『安全と豊かさ』を求めたのは記録が残っている。
そして外部からルーツを持つ人間ほど、この大地固有のアスガルド教…旧世界の言葉で言う『北欧神話』に馴染みがない人間ばかりなんだ…。」
「なるほど…。温暖で肥沃な大地を持ちながら我が国ほど技術や文化が発展してないのは、そもそも大破壊が原因ということか…。」
「それともう一つ。
殿下とミネルバはあまりに脆弱な身体が似過ぎだ!
両国王陛下がともに病に臥してることもな!」続