ジオン兄さんの行動には驚かされてばかりだが、今回は桁外れだ!
隣国のお姫様を連れて南海の孤島に永住するだと?
どんなおとぎ話だ!?
何のしがらみもなく、自分達の出自を気にすることなく、静かな海と温かい太陽に抱かれて、魚を獲りながら愛を育む日々か…。
…いいなあ…。
……。
……。
じゃなくて!!
「ジオン兄さん、それはあまりに唐突な!
外務大臣のポストはロイが兼務出来るかもしれないが、王女の代わりは居ないのです!」
なんということだ!
ハイネ殿下とミネルバ王女は幼い時から将来を約束していたというのに、そのミネルバ王女から先に破棄なさるとは…!
これでは益々ハイネ殿下の私への求婚が真実味を増す。
ハイネ殿下を咎める最大の材料が無くなってしまった…!
「おいおいリディア。
お前がそんなに深刻な顔することじゃねえだろ?
一国の王女が自由を選択したんだ。
お前も好きな様に生きたらいいんだぜ?」
「ジオン兄さん…。」
「ロイ、最後まで面倒事はお前に押し付けちまうことになってしまったが、お前達に何かあったらいつでも駆けつけるぜ!
落ち着いたら必ず連絡を入れる。
それになぁロイ。
大破壊の検証もいいが、大事なのは過去よりも今だろ?
世界の真実?真相?そんなのは俺の人生に何の意味もねぇ!
大事なのは今日の魚にありつけるかだけさ!」
「兄さん…。」
「ジオン=キャラガー外務大臣。
今まで貴方がこの国に貢献されたことは、私、ロイ=シェルストレームの手本であります。
しかし、隣国の姫を連れて大海原に出るなんて逆賊以外の何者でもない!
私は内務大臣及び筆頭裁判官として貴方に討伐命令を出さないといけない!」
「ロイ!そんな無慈悲な…。」
「何を言ってるリディア。
逆賊・キャラガーの討伐隊長はお前だよ。」
「ロイ、私にジオン兄さんを討てと?
そんなの出来るわけがない!」
「なるほど…僕にはロイの意図がわかったよ。
討伐令を出して暫くしたら、ジオンとミネルバ王女はリディア討伐隊長の追跡に堪えられず、海に身投げしたという触れをハイネスールシャールの名で出そう。
これで野盗や賞金稼ぎを気にすることなく海賊に専念出来るよね?」
「おいおい、俺はあくまで漁師だよ!」
「ロイは最初から…。」
「これでお前の武勲は揺るぎないものとなり、殿下が将軍に任命するには十分かもな?
リディア、お前は指環はよりも勲章なんだろ?」続