勲章と指環 42 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「…そうでしたか…丈夫なお子様を…。
それは確かに私には叶えてあげられない願いですわ…。

国民や王宮の中にはジョンを嫌う者は少なくありませんが、私も世継ぎを産めるほど丈夫でないと世間に知れ渡れば、市民は手の平を返し、ジョンとその血族に政治を任せたいと願うでしょう。」

「『私も』…?
どういうことですか、ミネルバ王女?」

「まぁ、ジオンから私の事を何も聞いてなかったのですね…!?
では、私がこんな身体だからリディアさんに求婚されたのではなく本当にリディアさんと国の行く末を思っての求婚だったのですね…。。
評判の通りお優しい殿下…最期に直接お言葉を交わせて良かった…。」

「最期?ではミネルバ王女はやはりジオンと?」

「はい。
午後の会議で私達の決意を伝えます。
ジョンが了承しようとしまいと、私達二人は、南海の孤島で未来を築きます。
昨夜、夜通しジオンの早馬に乗り、彼の背中を見て決めたことです。」

「それは素晴らしい!
貴女は十分に強いお人だ!
このハイネ=スールシャール三世にも貴女の勇気を分けてほしいくらいだ。」

「ただ…私の唯一の心配はジオンの本当の気持ちです。」

「本当の気持ち?
何を案ずることがありますか!
ジオンは我がスールシャール王国と、貴女のリーセ王国を表面上は敵に回してでも、単身で貴女を連れ去り、二人で生きることを選んだんだ!
ジオンの情熱は我が国の、いや僕自身の誇りだ!
彼が国から去ろうとも、ジオン=キャラガーは終身名誉外務大臣にしたいくらいだ!
仮にロイが反対しても僕がそうしたい!」

「…リディアさんへの想いが殿下を情熱的な殿方に変えられたようですね…。
ただ…私が心配しているのは、ジオンは私よりも両国の行く末を案じて、私を連れ去るのでは?と思うと…。
ジオンから愛されない苦しみよりも、ジオンから憐れみの感情を受け取るのだけは堪えられない…。」

「その心配は無用ですよ、ミネルバ王女。
彼の最大の魅力は『何よりも自分自身に忠実である』ということですよ。
さぁ、午後の鐘が鳴りましたね。
デザートを頂いたら、午後の会議が本当に最期だ。」
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「アンナ先生の著作は全て読んでいます。
深い見識や考察は敬愛しています。
しかし、一人の女性としては…。
すみません、俺の心は幼い時からずっと一人の女性との幸せだけを思ってきましたから。
…鐘が鳴りましたね。
リディア、戻るぞ。そこで話す」続