勲章と指環 41 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ハア、ハァ、厨房の食料庫から庭園までかなり距離があったが、この真冬に広い庭園のどこを見たがるかは限られている。
あの学者女はクリスマスローズを観賞しながら、夏に咲くクイーン・オブ・スウェーデンまた見に来る約束を取り付けるつもりだろうがそうはいかんぞ!
王宮全体の警備に精通した者しか知らぬ近道を通れば…。

居た!ロイとあの女だ!
良かった…。
私に内腿に隠した短剣を抜かせるような秘め事には及んでなかったようだ。
勿論、私のロイがあんな男女を受け入れるはずないが…。
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「どうしてそんなに疑うの!だからそんな関係じゃないって!
だって僕達は親子なんだよ!
ジョンは僕をハイネ殿下に嫁がせたいだけなんだ!」

「親子!!?」

しまった!
衝撃の事実に思わず声が…。

「誰?」

「その声はリディアか?」

「……。
私は『独り』でポインセチアを観賞してただけなのに、『二人の』お楽しみを邪魔したのならすまない」

「なるほど。『元気を出して』が花言葉のポインセチアが好きなんて、元気しか取り柄のない女騎士さんにはぴったりだね♪。」

「男口調で話すくせに、男の『元気な所』にしか興味ない女優だか学者に言われるとは思ってなかった」

「そう、じゃあ得意の剣技で『それ』を切り捨てたら?」

「貴様…。女としての私を侮辱するならまだしも、騎士としての誇りを傷つけ続けるつもりなら、父娘共々切り捨てるぞ!
厚顔無恥な所はそっくりだな!」

「おお怖い。
結局、女の方が暴力的なんだよね。
口は悪くとも、ジョンの方が遥かに理性的なんだよねぇ。」
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「なるほどな…。アルフォンソ=パウエル先生が女ってのも驚いたが、ここに同席した理由や、『女優アンナ』と『作家アルフォンソ』が同一人物であることを世間に隠していた理由。
全てジョン=カイザー丞相が、ミネルバを排斥してまで愛娘をハイネ殿下に嫁がせる為の布石だったわけだ。
こいつは見事に騙されたな。
父は軍事、内政、外交を一手に担い、娘は女優であり、歴史学者であり、舞台作家か」

「キャラガー殿、私は既に芽が出始めたアンナに出資しただけですよ。
娘の成功はミユキの教育の賜物ですよ。
それに私は何も自分の野望だけで王族に取り入ろうとはしてませんから…。」
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「リディアを見てると元気が出るんだ。
脆弱な僕には無い、強い肉体に幼い頃から憧れていた。
リディアなら強い子を産めるって」