「アンナ先生も物好きですね。
夏にはあっちの辺り一面に我が国自慢のバラが咲き誇るんですが、この冬に咲いてるのはこちらの

ポインセチアや
あの奥に見える

クリスマスローズ
くらいですかね。」
「そっかぁ仕方ないよね。
昨日今日と、雪が降らなかっただけでも幸運だよね。
ありがとうロイ。
これはまた夏に此処を訪れる楽しみが増えたよ。
勿論、僕達がこのままだったらね…。」
「クイーン・オブ・スウェーデン

は我が国の繁栄の証しです。
旧世界の女王陛下から寄贈されたという伝説が…。」
「詳しいんだね、ロイ。考古学の繋がりで植物の歴史も調べたのかな?」
「ええ、アンナ先生にお聞きしたかったのです。
霧が深くて船乗りの評判が悪いブリテン島の島民が、ローズ・オブ・スウェーデンを寄贈した旧世界の女王陛下の末裔だなんて本当なんですか?
あんな田舎の島がかつてはそこまでの繁栄を誇ったなどと…。」
「不思議だよね…。
まるでブリテン島の女王陛下は自分の国の斜陽を知ってて、このアスガルドの民にバトンタッチしたみたいに思えるよ。
両国の王族も大破壊以後に繁栄したのは明らかだからね。」
「ジオン兄さん…いや、キャラガー外務大臣の話を聞いて思うのは、確かに私達は豊かな国に暮らせている。
だが、南にはもっと気候が温暖で作物も育ちやすい土地が広がっているのに、何故、私達の国に比して発展が遅れてるか疑問です。」
「僕も一番知りたい所はそこだよ。
確かに大破壊そのものは神憑り的な『何か』がきっかけだったと思うけど、生き延びた人々は、もっと現実的な選択を迫られたから両王家が生まれたかもしれない。
確証はまだないけど、雪深いこの土地だからこそ、大破壊の被害が少なかった『何か』が、生活のデメリットよりも、この地に人が集まった理由かもしれないよ。
多分、『海賊あがり』の外務大臣の方がそういった生の声を僕達より拾ってるんじゃない?
それに…。」
「それに…?」
「ポインセチアの花言葉は『元気を出して』だよ。
大破壊後の復興の象徴だったと思いたいな。
でも、僕はクリスマスローズが一番好きなんだ。
あそこに連れてってよ」続