勲章と指環 35 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「カイザー丞相にパウエル先生。貴重な資料の開示に対し、スールシャール王国の王子として感謝の表明致します。
エマ、絵師を喚んでこの『カミナリオコシ』の絵の模写を頼む。
ロイは警備兵長官に頼み、アマテラスの文化に詳しい市民の情報収集を!」

「畏まりました、ハイネ殿下。」

エマは殿下に言われると、私に小声で(あとは宜しくね)と言い、皆に一礼して直ぐに会議室を出た。
エマはメイドでもあると同時に王子付きの密使の役目も担っているのであろう。
騎士団長の私がその詳細を知っていれば、密使の意味はないのだが…。

そして軍を統帥する将軍なら、内務大臣のロイを経由せずに、私が直接に警備兵長官に命令を下せるのだがな…。

「私とアンナの仕事が両国の発展に繋がることは、このジョン=カイザーの至上の悦びでございます。
ハイネ殿下とスールシャール王国のますますのご健勝を…。」

「では、宗教会議はここまでにして、続きはデザートを頂きながら『本当に話したいこと』を話し合おうか?
ロイ、ジオン、これでいいかな?」

「はい、仰せの通りに。」

殿下は単独で何かを決めることは稀で、いつもロイやジオン兄さんの意見を尊重していた。
それだけに殿下が誰にも心情を明かさず、相談もせずに私に対して…。
いや、私はその話を決着させる為にこんな恥ずかしいメイドの格好をしてまで潜入したのだ。
私が真に向き合うのハイネ殿下とスールシャール王国の行く末であり、この学者女じゃない!
カイザー丞相と親密やクセに、学問の興味で私のロイの気を引こうとする女なんかに…。

「わぁ、デザートかぁ。王宮のお菓子が食べらるんだ♪
ねぇ、ロイ。デザートが出来るまで王宮の美しい庭園を案内してよ?ジョン、いいでしょ?」

「あぁ、行ってきなさい。お菓子に庭園は我がリーセ王国の職人がこちらに何人も学びに来ているからね。」

「は~い。じゃあ、ロイ。行こうか?ハイネ殿下、失礼致します。」

こっ、この女…!女性から逢い引きを誘うなどと…恥を知れ!
いや、私もロイを劇場に誘うつもりだったが…って、この女が主役の舞台の話じゃないか!

「ま、待て。庭園の案内なら私も…。」

いやだ!二人きりにはさせない!と思った時、ジオン兄さんが

「あぁ、悪ぃ。そういや料理長は俺が縛り上げたままだったな。待ってもデザートは来ねえわ。リディアほどいてやってくれ。」

ジオン兄さんの馬鹿!二人に遅れちゃう