「ふぅ~、生きた心地がしなかったよ、ロンド騎士団長も大変だねぇ。」
「申し訳ございません、料理長。
キャラガー外務大臣には私からも厳しく…。」
「いいってことよ、そんな外務大臣だからこそ荒くれ者達から慕われてるのも事実でさぁ。
あっしの経歴を馬鹿正直に語ったらコレ者ですぜ、ハハハ。」
と、短い首を切る仕草を見せる料理長。
ジオン兄さんが会議室に潜入する為にシェフに成り済ましたが、その為に本物の料理長は食料庫に閉じ込められていた。
自分の目的の為なら平気でそういうことをするジオン兄さんだから、事後処理はまた私の役目だった。
「では私はこれで…。」
役目は終わった。
早く庭園に向かってロイを見つけないと…。
あの学者女の態度…油断出来ない…。
「しかし、あれですな。
騎士団長様のそんな可愛らしいメイド姿が拝めたのなら監禁され甲斐があったってモンですな。」
「やっ…そんなじっくり見ないでください!
この服は会議室に入る為にはエマの言うことを聞くしかなく…。
殿下の許可を得ましたので直ぐに着替えます!」
そうだ、この服も早く着替えたいのに、庭園に急がないと…。
待てよ、私がロイと庭園を散策出来るなら、騎士のマントよりもこの極端に短いスカートの方が喜んでくれるだろうか…?
「ロンド騎士団長、あっしは…。」
「申し訳ない、自分は先を急ぎ…。」
「長話をするつもりはありやせん。
キャラガー外務大臣やシェルストレーム内務卿が人気者の様に、騎士団長をお慕いする者もたくさん居ます。
そしてその中には貴女に女としての幸せを掴んでほしいと願っている者もたくさん居ますぜ。あっしの様にね。」
「そんな事はわかっています。
でも、将軍を目指すのも女の幸せであってもいいはずです!
自分は作家でも学者でもありませんから上手くこの気持ちを言葉に出来ませんが…。」
「貴女は今、キャラガー外務大臣が連れてた女性と同じ目をしていますな。」
「まさか…!?私をミネルバ王女と比べるなどと無礼極まりません!」
「なんと!あの調理婦はリーセ王国の姫でしたか?
やはり貴女と似ていらっしゃる。
但し、向こうは既に相手の胸に飛び込むことを選んだようですがね?」
「相手の胸に飛び込む…?
料理長…変な質問だが、私がこんな格好をしているのはおかしいだろうか?」
「とんでもない、男な誰でも今すぐ丸ごと料理したいくらい見事な素材ですぜ!」続