メイドの心得とハーブの癒し~勲章と指環 25 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「…どうぞ…。」

先ずは上座のハイネ殿下に対して下座に位置するカイザー丞相と学者女に、エマがティーポットからお茶を淹れる。

「見習いメイドのララァ」となった私は先輩のエマの補助に専念した。
エマは事前に

「何があっても絶対沈黙を守って私に従いなさいよ!」

と私に念を押した。
ティーポットからお茶を注ぐならまだしも、ティースプーンと受け皿を先に置く程度なら、不慣れな私でも粗相するまい…。。

「お久しぶりです、ミス=クレイトン。
また、貴女にグロッキを淹れて頂けるなんて私は果報者ですな。」

(丞相は殿下に何度もお会いしてるから、お付きのエマを憶えていて当然か…。)

「まぁ、相変わらずお上手ですこと。
お隣に多才な女優学者を座らせておきながら、私にそんな事を仰っては、丞相様は背中の引っ掻き傷が治る暇もなさそうですわね…。」

(背中?丞相は政治家であり、軍人でもあるから、容易に背後から攻撃を受けないであろうな…。)

「あぁ、ジョンと僕はそんな関係じゃありませんよ♪
それよりこれがグロッキ?
こちらにそういう飲み物があるのは聞いたけど…。」

「アンナ、お前は興味がないことには本当に無知だな。
グロッキとは、搾りたての葡萄果汁を温めてハーブを加えた北の大地のスールシャールに古くから伝わる飲み物のことだよ。
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「まぁ、丞相様は何でもご存知なのですね。」

「貴女が新人メイドの教育係を任されてことは知りませんでしたよ。」

「あら、丞相様ったら直ぐに若い女を…。
ララァ、丞相様がお呼びですわ。
挨拶なさい!」

(ま、待て!沈黙を守れと言ったじゃないか…。でも先輩に従えと言ったから…。)

「お初お目にかかります。
見習いメイドのララァ=アノーです。」

(貴婦人教育は直接受けたことはないが 、挨拶程度なら…。
…このメイド服、いくら何でも丈が短か過ぎだ!お辞儀をしたら大変なことに…。
くっ…今までで一番過酷な戦場だ…。)

「リーセ王国総括大臣のジョン=カイザーです。
ふむ、その制服は恐らく私への『おもてなし』でしょうが、どちらかと言えば、短い丈より、胸元が大胆にカットされた方が…。」

その時、すぅ~っと丞相の手が伸び、私の胸に!
エマは鬼の形相で私を睨み付け、「我慢しろ!」と小さく首を振って見せた。
これがメイド世界の常識なのか?