勲章と指環 9 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「リディア、あ~そのなんだ。呼びつけたのは俺なんだが…申し訳ない、お前だけ特別扱いしたら…俺、内務大臣だし…。」

「言われなくてもわかってる!
シュレストローム内務大臣閣下様のご尽力で『反逆罪』ではなく、『不許可抜刀』の罪だけにしてくれたことには感謝で言葉もありませんです!」

…わかってる、私が悪い…。
ロイは、ハイネ殿下が私に求婚したことなんでどうでもいいんだ…。
冷静さを失った私は、ロイに背負い投げをお見舞いし、馬乗りになって喉元に刃を押し付けた。
ハイネ殿下の妃となり、騎士としての死を迎えるくらいなら、愛する…そう、ずっとずっと愛していたロイを刺して投獄された方がマシだと思った…。
だが…ロイはずっとロイだった。

「女が男の上に跨がってるこの状況を、警備兵の青年や小間使いの少女が目撃したら『男女の楽しみ』にしか見えないだろ?」

だと?自分が危機の時だけ私を女扱いして!
あいつの舌先三寸に乗せられもう20年だ!!
駆けつけた警備兵は案の定、私を反逆の使徒と思い、遠慮なく取り押さえたではないか!!

そしてロイは

「あぁ、すまん、幼なじみのロンド騎士団長と戯れが過ぎただけだ。」

だとシレッと述べた!
…絶対…わざと…だ…。
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「申し訳ございません、ロンド騎士団長殿。
自分は、第三機甲師団所属のジェリド=メルベリと申します。
この採掘場から王宮までの帰途、敬愛致しますロンド騎士団長に罪人の腰縄をつける無礼をお許しくださいませ!」

礼儀正しい逞しい身体付きの青年兵は私に恐縮しまくっていた。
…この青年は、騎士としの私しか知らない。私の武勇しか知らない者達は、王妃となる私を、変わらずに自分達の誇りとしてくれるだろうか?
無様な妃となった私を女道化師と思うだろうか?

王宮までの帰途を、自分の愛馬ではなく、ロイが率いる採掘団の馬車に放り込まれたのは都合が良い。
物思いに耽るには最適だ…。

「申し訳ございません、ロンド騎士団長殿を娼婦と同じ馬車に同席させてしまい…。」

「不許可抜刀は本当だ。
君は私を騎士団長ではなく、ただの罪人として扱うべきだ。
同じ罪人…そう、採掘品を盗もうとした作業員と同じ馬車に乗せられぬだけ感謝してるさ…。」

「勿論であります!盗掘犯には手錠をかけてますが、ロンド騎士団長殿には腰縄と剣の一時預かりだけはどうかご容赦を!」

「構わぬ、君の忠誠は私ではなく陛下だからな」