ファインチューニング!~マリアにお願い 27 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「あなた方はわかってるはずだ!
この世の富など何の役にも立ちません。
地上にではなく、天に富を貯めるのです!」

「イエス!こんな所に居たのですね…!突然私達の前から居なくなるから…。」

「母上、何故、私を探すのです?
私が神の言葉を伝える為に…」

「はい、カット!」

腕組みをして、厳しい視線を演者に投げかける、総監督の剣崎周。

主役を降りて監督に専念する彼女は、妥協を許さなかった。
「そこの庶民!何度同じ事を言わせるの?
聖母マリアはまだこの当時は慈愛に充ちた強さは持ち合わせていません!
イエスが復活なされた後に彼女は真の強さを得ます。
それまでは息子のイエスの言葉に従う少女の様な母親なのです。
もっと弱々しく心配する雰囲気で。」

「は~い、演劇って難しいわね。
ま、だから面白いんだけど。」

「でも、三好さんが演劇未経験とは思えませんよ。
僕は教会で毎年クリスマスにはキリストの誕生劇を子供達とやってましたから…。
まだ日数はあります。
きっと本番までには良い舞台が出来ますよ。」

赤尾が快諾した理由は
「神様の為」
以外はなかった。
女子校や文化祭など関係ない。
演目が「キリストの復活劇」でなければ、自ら主役として舞台に立つ決断はしなかっただろう。

「申し訳ございません、赤尾先生。
私の責任下において、このド素人庶民にはスパルタ式に鞭を振るって…。」

(演劇部一年生1)「ねぇ、剣崎部長はホントに舞台に立たないのかな?」

(同2)「ええ、監督に専念するらしいよ。」

(同3)「イエスを迫害するヘロデ王役なら、合法的に舞台で赤尾先生に鞭を振れるのにね♪」

(全員で)「それだ!!」
****
「お嬢様、皆様、申し訳ございません。
今、ユダ役の篠山さんのメイクと衣装合わせが終わりました。」

山際佳澄もお嬢様と同じく演劇部だが、彼女も舞台に立たない。
幼少の頃より周お嬢様の衣装合わせと髪結いをしてきた流れで、聖バーバラの演劇部でも部員のヘアメイク、メイク、スタイリスト担当だ。
そして今日、マリア役の真理亜、キリスト役の赤尾俊光に加え、この演目の最大の悪役、「裏切りの使徒ユダ」を演じる篠山五月のメイクが終わった。

五月は元々スレンダーでボーイッシュだった。
セミロングの髪の上に銀髪のショートカットのカツラを被れば稀代の美少年ユダがそこに居た。

ミュージカル経験のある彼女も、たちまち後輩を魅了した。