「聖母マリアはイエスを育てたことにより、『聖母』となりました。
イエスは12歳の頃には既に聴衆を魅了する演説をしていました。」
礼拝堂で生徒達で情熱的に話す赤尾。
三好と山際だけにお説教をするつもりが、扉の向こうで立ち聞きしようとする生徒で溢れ返り、仕方なく礼拝堂を開放した。
女生徒達の大多数が聖書の話なんてどうでもよかった。
聖書に準えたお説教に対して、いつ三好真理亜が赤尾助祭に切り込むのか?
赤尾は助祭というよりも、一人の男性として理性を保てるのか?
板挟みとなる山際はその仮面を脱ぐ時が来るのか?
生徒達の真剣な眼差しは、赤尾の話に夢中になってるかの様に思わせた。
「イエスの行いは対立するパリサイ派の人に妨害されます。
それは手を骨折した人をイエスの前にわざと向かわせ、『安息日にイエスは奇跡を起こすか?』を試されたのです。
イエスは言いました。
『安息日に正しいことをするのは悪いことか?悪いことをしても許されるのか?』と。全ての労働が禁止されてる安息日でも、イエスは迷いなく男の手を治しました。
だから私達は若く情熱的な貴女達に言いたい。
本当に正しいと信じた事の為になら、規則をも破る人であってほしい。
主に許されないと思い、その歩みを止めるなら、その恐れこそ、最も恐るべきだと!
信じる者の為になら、全てをやり遂げた後で、審判に委ねる覚悟を持ちなさい!」
クライマックスを迎えた赤尾助祭の演説。
礼拝堂の女生徒達はスタンディングオーベーションでお返しした。
「やだ…。かっこいい…電気屋の赤尾さんにはもう会えないかもって思ってたのに…助祭様だったなんて…益々好きになっちゃうじゃない…。
でも、ライバル多そうだな…私なんか…。」
「五月、任せない。
私が他の生徒の興味を引くわ。」
「やり過ぎて赤尾さんの気まで引くのは駄目よ!」
「わかってるわ…。
赤尾先生、『罪人』に関して質問で~す。」
「どうぞ、三好さん。」
(真理亜先輩が来たぁ~!)
(いきなり『罪人』だって~。どうするのかな?)
「イエスは『健康な人に医者は要らない』と言ってましたが…その…マグダラのマリアへの思い入れは…彼女の職業故でしょうか?」
「三好さん、見解の分かれはあるだろうけど、イエスはマグダラのマリアを職業に関係なく愛していた、と僕は思いたいよ。」
「じゃあ…赤尾先生も売春婦みたいな不良生徒は特別扱いしちゃうんですか?」