噂は学院内に一気に広まった。
下火になった「電気屋さんブーム」も、赤尾が教区内の助祭であったという衝撃の事実で再燃するには十分であり、
「あ~ん、白マント姿の赤尾さん見たかった~。」
「去年も来てたのに、誰も気付いてないんだから!」
「大丈夫よ、文化祭に司祭様と来てくれるんだから」
「じゃあ、結局誰の招待状も受け取らないんだね。
良かったんじゃない?
誰かが一人勝ちするより」
「うん、でもそれより…。」
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「三好さん、山際さん。
君達の感情全てを主は否定しません。
快楽そのものが駄目というのではありません。
快楽に自分を見失うことがいけないのです。
三好さん、若い貴女が身近な山際さんに想いを寄せることを否定しません。
しかし、力任せはいけません。
その腫れた頬…山際さんの気持ちを考えたことはありますか?」
「ほえ?あたしが佳澄ちゃんを…?
ええと赤尾さんのそのマント姿はコスプレじゃないですよね…?」
(小声で)「三好さん、意図はわかりませんが、修道院長と後藤さんが何か画策したかもしれません。
そもそも貴女の日頃の行いが…。」
(小声で)「だからあんたのお嬢さんに黙っとけって釘刺したといたでしょう?」
「それをわかってて破ったのは私です…。」
「これからは毎日、放課後に主の言葉を聞かせてあげます。二人とも必ず礼拝堂に来るように。
マザーテレサの伝記に感銘を受けて20年…。
こんな事で修道院長様のお役に立てるなら嬉しいです。
それでは今日はこれで…。」
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下級生の間には赤尾よりも、憧れの真理亜先輩と、周お嬢様のお付きの山際さんとの創作ロマンスで持ちきりだった。
それぞれ勝手に先輩を演じ、
(後輩1)「真理亜、駄目だ!君の気持ちに私は答えられない。
私にはお嬢様を守る使命が!」
(後輩2)「あぁ佳澄さん、私を連れて屋敷を飛び出してくれないのですね。」
(後輩3)「ええい、よくも私の召し使いを誘惑しましたわね!あの庶民はいつもいつも。」
(後輩4)「君達は女子校という特殊な環境で特殊な熱病に冒されてるだけだ。僕が毎日愛の個人授業してあげるよ。」
(その他の下級生達)「キャ~優子の赤尾さん役エロ~い。
明日私も絶対に礼拝堂覗きに行くわ。」
「私も~。真理亜先輩がすんなりお説教聞くわけないじゃんね♪」
「巻き込まれた山際先輩も、あの鉄仮面が崩れるとこ想像したら萌えるわ」続