同時刻…原宗時のオフィス
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「なるほど…。
私のタロットでも、この件に関するグラシャ=ラボラス殿の暗示は『魔術師』のカードの通り『知恵者』ですよ。瞳やアンドロマリウスに助言者となるでしょう。」
原宗時は、「占い師バラム」らしく、タロット占いでスポーツジムでの一件を占ってみた。
しかし、敢えて結果を瞳に教えなかった。
「私も、グラシャ=ラボラスさんに対して、『デビル』や『恋人』のカードは出なかったわ。宗時さんほど完全な占いは出来ないけど…。
でも、いくら犯人が魔王クラスじゃないからって、今の私にはおみねちゃんが…。」
「瞳、貴女の本当の強さは妖刀使いとしての腕前ではありません。
年長者として事態を見据える、『瞳』そのものですよ。
そして僕がどれほど修行しても占いに『完全』はありません。
どんなに正確にタロットを引き当てても、それを正確に読み解くかは別問題です。
そして運命とは決して正確に読み解くことは出来ません。
占いとは大自然の法則に触れ、神の御心の一端を知るという神聖な儀式なのです。」
「宗時さんの言うことは最もだわ。
でも、私…。」
「怖くて当然です。
でも瞳は一人じゃありません。
僕はずっと一緒です。
瞳、これは僕が若い頃に使ってたタロットです。
きっと瞳と皆様の役に立つはずです。」
「宗時さん…私、頑張る!
独身最後の大捕物を決めてやるわ!」
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同時刻…アジアン雑貨ティンブー
「…と、いうわけなよ…。」
「…なるほど、グラシャ=ラボラスの日頃の行いを思えば、アンドロマリウスはさぞやご立腹だろう…。
だが、奴はそんな卑小者ではない…。」
「…星明が出ていって、バティンさんや他の悪魔を召喚したら簡単に解決するんだろうな…。
でも…。」
「久美子さんや北御門さんの力になりたい奈々子の気持ちはよくわかります。」
「でも、私…無力だわ…。
真利子さんみたいに悪魔族じゃないし、北御門さんみたいに剣術も占いも出来ないわ。
ただの雑貨屋店員だもん…。」
「『ただの雑貨屋店員』だから出来ることもありますよ…。
倉庫に一緒に来てくれますか?」
「倉庫?どしたの…?」
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アジアン雑貨ティンブー倉庫内
「…この店は…時々『本物』を発見するからこそ面白い…。
奈々子、ここで見つけた この三枚の色紙は『本物』です。折り紙の様に使うだけで貴女達の『身代わり』の役目を果たします。」