「いやぁ!ごめんなさい、わ、私は王明さんが既婚者と知らずに…。」
その言葉だけで無関係な天使の警官隊にも大体の関係性が想像出来てしまうが、真利ちゃんは構わず能代警視の奥さん?に怯え続け…。
「グラシャ=ラボラス!
私と一緒に逃げて!」
と言い出した。
グラシャ=ラボラスさんは、そっと真利ちゃんの手を握り、視線は奥さんの方に向けたまま…。
「出来るなら俺だってそうしてぇ。
だが、俺とお前が『あいつ』と思ってんなら、俺でも逃げ切れるかどうかってのは、お前が一番知ってるだろう?」
「いやぁ!許して!」
より強くグラシャ=ラボラスさんは真利ちゃんの手を強く握った。
ここまで緊張した彼は初めてかも…。
でも、その中でも私の弟、星明だけは落ち着いていた。
苦渋の面持ちで、やりきれないように首を振った。
あまりに取り乱す真利ちゃんに、流石に奥さんも気付いて…。
「ごきげんうるわしく。
でも、まずは閣下に暫くぶりの方に挨拶させてくださいまし。」
と、わざと芝居がかった口調で言った。
能代警視より少し年上に見える40~42歳くらいのロリータファッションの女性。
スカートの端を摘まんでの西洋式のお辞儀が不気味なほど似合っていた。
「ご無沙汰しております閣下。人間名は能代梨衣子。旧姓は志戸です。
天界の大物の手前、『あくまでウリエル様の人間界の弟』として扱う無礼をお許しくださいまし。」
「…余に構うな…。」
これでこの奥さんは魔界の大物だとわかった。
星明は何か昔から彼女に特権を認めてる様だった。
「さぁて挨拶も終わりましたし、『裁き』といきますか♪」
「いやぁ!助けて!」
「落ち着いてアンドロマリウス♪…先に裁くのは…そこの史香とかいうアバズレよ!」
名指しされた史香は身体がビクンとし、天使の彼女は奥さんの正体がわからないながらも、並々ならぬ魔力を肌で感じていた。
「自分の為なら王明くんと共謀し、仲間を売るばかりか、人質に取り刃を向ける始末。
でも、王明くんに股を開いてまで出世を懇願しなかったのは救いか…。
罪名 脅迫・共謀・不倫幇助未遂
判決 『半裸』
火炎魔法・熱波武装解除!
己の淫らな欲を燃え盛る火の中で悔いなさい。」
「いやぁー!」
奥さんの言葉と同時に史香が炎に包まれたが身体と下着は燃えなかった。
噂には聞いてが確信した。彼女はソロモンNo.12『脱衣の悪魔シトリー』だ。