「く、来るな!」
青年は、折れた剣を振り回しながら、尻もちをついたまま後ずさった。
「フフフ、そんなに怖がらないの…♪
私が欲しいのは貴方の命じゃないの。
貴方自身なんだから…。」
「ふ、ふざけるな!
我等は誇り高き『能天使(パワーズ)
悪魔からの恥辱を受けるくらいなら死を選ぶ!」
最初は人間として私服警察官の姿で現れた彼ら10人も、ものの三分で海竜リバイアサンの前にひれ伏した。
天使の力を開放しても既に遅く、翼はもがれ、剣は折れ、法衣はボロボロだった。
彼以外の先輩達は立ち上がれず、どんなに彼が声を上げても反応はなかった。
指示を出した能代警視に念話で応援を依頼しても返事はなかった。
「ねぇ…僕は何で、そんなに一生懸命に私達悪魔を嫌いなったフリをするのぉ?わかりやすくお姉さんに教えてくれない?」
レビアたんは近づき膝をついた。
レザージャケットのファスナーを下げ、前かがみになれば、豊満な胸に記された幾つもの鱗のタトゥーが嫌でも彼の視界に入った。
「使命として悪魔を滅する!それだけだ。」
目の前の谷間に目を逸らしながら、必死で威嚇する。
その姿にレビアたんは笑いながら…。
「ヤハウェの為に悪魔を退治したいんだ。
そしたら出世出来るもんね。」
「だ、だから何だ?」
「…フフン♪僕が気に入っちゃった♪
ほら、これをあげる。」
レザージャケットから取り出した短剣。
彼は自分が刺されると思ったが…。
「ねぇ、僕。この短剣は私自身の鱗を集めて研磨した短剣よ。
あんた達のナマクラ刀より遥かに鋭く、硬いわ…。
『嫉妬の魔王』として、私を殺れば、僕を命令した上司に肩を並べる大出世も可能よ。
でもね…もっと気持ちいいこと…あるんだけど…なぁ♪」
短剣を彼に握らせ、隙だらけの格好を見せながら、彼の耳元に息を吹きかける。
立ち上げることさえ出来なかった彼に「元気」が戻る。
「…何を…?」
「あら、初等科で習わなかった?
レビアたんは『灼熱のブレスを吐く』って。あれは竜が火を吹くじゃなくて、嫉妬の心に火をつけ、肉体を火照らせるって意味よ。
さぁ、短剣で私を刺す?
それとも『僕の短剣』を私のココに挿す?
自分で決めなさい…。」
「だ、駄目です。
天使は悪魔とこういうことしちゃ駄目ですよ…。」
「じゃあ、選んで。
気絶したフリしてる先輩達も、僕の選択を期待してるから♪」
「え?そんな…。」
彼は堕ちた。