「意外と遠いのね~。
近藤くん、ごめんなさい。
私がもっと早く手を打っておけば…。」
(能代さん…。私は貴方の何だったのですか…?
奥さんが居ながら、私とそういう関係になっておきながら、2000年の時を超越してウリエル様だけを求めていたんですか…?)
(アンドロマリウス、真実はお前が決めることだ…。
その為に…俺が居るんだろう?)
(グラシャ=ラボラス…。
貴方と契約して本当に良かったわ…。
私一人なら心が折れてたわ。
ソロモンの悪魔アンドロマリウスじゃなく、人間界で暮らす女探偵・安藤真利子として幕引きと責任だけに思いを巡らしてたわ…。
でも…。)
(でも…なんだ?)
(その言葉、マルチーズの姿で言われてもねぇ?)
(仕方ねぇだろ!
この姿じゃねえと俺は飛べねぇんだから。)
「大丈夫よ、真利ちゃん。
姉である私にお姫様抱っこされて移動してる、ウチの弟の方がカッコ悪いから。」
「も、申し訳ございません、姉上。
私は自分で跳べますので…。」
「冗談よ!星明は既に大仕事したんだから、後は私に任せなさい!」
…そう、私達は「跳んで」いた。
渋谷の109から警視庁のある千代田区まで、私は弟の星明を抱えて、グラシャ=ラボラスさんは契約主の真利ちゃんを抱えて跳躍を繰り返していた。
本当は翼を出して、天使の力を開放したいんだけど、これ以上天界に無許可で行動したら、またミカエル様にお仕置きされそうだ。
なので「あくまで人間」として10数メートル級の高速ジャンプで移動中だ。
星明が私に抱えられてるのは、レビアたんの召喚に魔力を一気に使い果たしたからだ。
「レビアたん大丈夫かなぁ?」
「何を心配する必要があるのです?
レビアたんは『神が作った最高傑作』。青臭い能天使10人なんぞ遅れを取るはずは…。」
「そんなのわかってるわよ!
ただ星明が契約の対価を『相手の能天使を好きにしていい』なんて言うから…。
能天使は特に体育会系で色恋に奥手な繊細な少年が多いし、海竜リバイアサンはパートナーをヤハウェ様直々に消滅させられた恨みがあるって言うしさ…。」
「やり過ぎでしたでしょうか?」
「遅いわよ!
彼らがレビアたんに変な風に調教されて堕天したら、経費は魔界に請求するからね!」
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召喚から3分後の109
「強すぎる…。悪魔だ…!本物の」
「あら…もう誰も立てないの?
じゃあ、私が勃た…いや、立たせてあげる」