動き出した時間~セキララ 12 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「はい…。」

と、彼は1コールで電話に出た。まるで私を待っていたようだ。

「あの…。」

「……。」

「……。」

手紙に書かれてあった「俺が守る」の言葉に私は完全にやられた。

ケーキを頂いたお礼どころか、自分の名前も名乗れなかった。
でも受話器の向こうのグラシャ=ラボラスはただ無言で待ち続けてくれていた。
電話をかけたのが私だと知っているからこそ、切らずに待ってくれてるのがわかった。
僅かに息が漏れるだけで、彼は一言も喋らず、私のタイミングで話すのを待ってくれていた。

「…何で何も言わないの?」

「お前が何も言わないからだろう?」

わかってる。こんな事が言いたいじゃない。
でも不思議な安心感があった。
私は沈黙を共有してることが嬉しかった。

(私と契約するなら、人間界で外で会ってください。日定を決めたいです。)

これだけの事が言えなくて、

「…明日は…?」

と、絞りだすのが精一杯だった。

「いつも通り店だが?御子神に急な仕事が入ったから明日は大変そうなんだがな…。」

「そう、明後日金曜日はロビン店長が休むから無理だよね…。」

「土曜ならいいぜ。」

「わかった…。
○○駅向かいの△△ビル前に10:00でいい?」

「何でぇ、用があるなら…。」

「転移魔法はやめて!
場所と時間を決めて待ち合わせするからいいの!」

「すっかり人間みたいな事を言うんだな、アンドロマリウス。」

「人間界では人間だもん…。それに安藤真利子よ!」

「わかったよ。
無駄を好むのは人間の不完全とう最大の美徳なり。
どこまでもお供しますぜ、お嬢さん。」

「私と町を歩くんだから、それなりにお洒落して来るのよ!
ジャック・スパロウ
ファイル1540.jpg
で町歩いちゃ駄目よ!」

「いけねえか?」

「カッコイイけど種類が違うの!
普通にジャケット羽織るだけでいいから!
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「わかった。
だが、人間に化けて人間界に出ると能力が制限されてかなわん。
今、手元に俺の手紙とペンはあるか?」

「あるよー。これがどうしたの?」

「俺の名前の下にお前の名前書け。」

「アンドロマリウス?安藤真利子?どっち?」

「どっちでもいい。」

「じゃあ、アンドロマリウスって書くね。」

私はまんまと契約してしまった。