無礼は私からお詫びしよう。」
ロビン店長は何かと私に喰ってかかるグラシャ=ラボラスを宥め、カウンター席から出てきた。
ハリソン=フォード

のような渋い笑顔でアゴヒゲを撫でながら、御子神さんに隣のテーブルとくっ付けるようにと言った。
そして…。
「真利子君、同じ女性として沙代理君にも話を聞いてもらうといい。何といっても、人魚は人を惑わすからね♪」
「ちょっと、店長!大昔の船乗りの話を本気にしないでっていつも言ってるでしょう!
ほら、明日香姐さんもピアノはいいから、一緒に座って。」
明日香と呼ばれる女性は、沙代理という女性より年上のようだった。
私や他の客を気にするでもなく、淡々と演奏を続けていたが、沙代理さんに呼ばれて席に着いた。
彼女は一言も喋らず、手にしたペンとスケッチブックで筆談を始めた。
おそらく口が聞けなくて人間界に馴染めなかった妖怪か妖精をピアノ弾きとして雇ったのね。ロビン店長も大変ね…。
『はじめまして。
筆談で失礼します。
鳳明日香ことソロモンNo.37『詩と科学の悪魔・フェネクス』です。
お話は聞こえてました。
人間界で探偵さんをされてるなんて尊敬します!o(≧∇≦o)
私はここのスタッフとお客様に慣れるのも大変でした(>_<)』
「じょ、序列37位のフェネクス様!?
し、失礼しました。
わ、私72位のアンドロマリウスです…。」
「大丈夫ですよ、明日香姐さんは魔界に居た時の記憶ないし、真利子さんもこの店の元従業員ならそんなの気にしないの知ってるでしょう?」
「う、うん。つい、魔界の習慣がね…。」
「それより明日香姐さん、イラスト上手くなったね、その顔の表情があると筆談もわかりやすいわ!」
『用高の提案です。』
「あっ、真利子さん。用高ってのは姐さんの彼氏で、妖狐族のイケメンでしかも消防士なんですよ~!うん、真利子さんの彼氏さんと公務員繋がりですよね?」
「か、彼氏じゃないから困ってるのよ!王明さんには奥さんが…。」
「ごめんなさい…。
ねえ、真利子さん。
その電話がホントに奥さんからだと?
それに能代さんが貴女の方から消えてもらいたくて、一芝居打ったとか考えたことないんですか?」
『出世したから用済み』
「姐さん、直球過ぎ!」