雲をつくほどの大男は、酷く痩せていて、その視線は細いサングラスに隠されてわからない。
そして腕の中には「相棒」の白いマルチーズ

がしっかりと抱かれていた。
長身の男は私を見るなり、
「Can you keep my secret ?」
と問いかける。
私が「はい。」
と言えば商談が始まる。
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「なんと…。
それは身も引き裂かれる想いでしたね…。
心中を察します…。」
それにしても薄情な男達だ!
ほんの五年前は私だってこの店でウエイトレスとして働いてたというのに、目の前の御子神さんは私を「依頼人」としてしか話をしていないし!
ロビン店長だって、遠くから微笑んでるだけだし、この店から外に出れないテリーとブロッケンの為に人間界の土産話だってたくさんあるのに!
「おかえり」
とか
「大変だったね」
とか
「またいつでもここで働いていいんだよ」
って言うのが大人の付き合いっていうか、社交辞令じゃないの?
ってか、そんな事を気にする私だから、男の嘘を三年も見抜けないんでしょ!
(一人突っ込み完了)
いや、それよりも、それよりもよ。
店長やテリーとブロッケンが、私を気にせずに仕事に専念するのは良しとしよう。
仕事が忙しいであろうゼパルさんに会えないのも我慢しましょう。
百歩譲って御子神さんが今の私をただの依頼人にしか見えないのも仕方ないでしょう(彼は感情で動く人でないし…。)
だ・け・ど…。
問題はお前だよ、マルチーズ!
何、シレッと犬のつもりで居続けてんの?
「殺人の悪魔」グラシャ=ラボラスは、五年前に私こと「ソロモンNo.72」アンドロマリウスの人間界行きを最後まで反対してたんじゃないの?
五年前の事は忘れたの?
私の後にきょぬーの人魚ちゃんを雇ったらもうお払い箱?
何で私の周りの男ってこんなのばかりなの?
だから私は王明さんが既婚者だったって三年も気付かなかったの?
何か…腹が立ってきた…。
私は御子神さんの話をよそに、遠くを見つめ…。
「わぁ、あの娘、大きくなったら絶対美人になるわ~♪」
と大きな声で言ってみると…今まで黙ってた白いマルチーズが…。
「どの娘だ?」
と振り返った!
あぁもう!このロリ○ン悪魔!続