思い出した!
確かに私と嵐は出会っていた。
私は、私の事を相野グループの人間という目で見ない相野嵐という人間が新鮮だった。
麗香お姉さんには雪之介が、凛子お姉ちゃんには月之介が居ることが羨ましかった。
そして私にも姉と同様の召し使いがやっと出来たと勝手に思い込んでいた。
でも、当然ながら嵐は思い通りにならなかった。
お通夜の夜に一緒にピアノを弾いても、一緒にお絵描きしたり、なぞなぞを出し合ったりしても、嵐はいつもめんどくさそうだったし、私に命令ばかりしていた。
それは明らかに雪之介達が姉に取る態度とは違ったが、私にはそれが新鮮で嬉しかった。
お父さんを亡くしたばかりで嵐も辛かっただろうけど、その日の夜は、私に取って言い様の無いくらい満足した夜だった。
だから翌日に葬儀が終わっても、嵐は私と遊んでくれると思ってた。
でも、嵐が興味を示したのは同性の雪之介と月之介だった。
今だからわかるが、8歳の男の子が男同士で遊びたがるのは当然だった。
嵐は男三人だけで釣りの穴場に向かおうとしていた。
男の子に取って、「秘密基地」を教えるとは友情を固める上の必須の儀式だそうだ。(私は今もその辺りはよくわからないが、舞やパパも似たような話をしてたと思う。)
私は勝手に自分だけ意地悪されたと思い、後を追いかけた。
今でこそ霧雨兄弟は姉達に忠実だが、当時10歳と9歳の二人は、姉から一時的に開放されたことと、同性の仲間が嬉しかったのだろう。
男三人で釣りを楽しんでる所に私は…。****
「ちょっと!私だけ仲間外れなんて許さないんだから!」
「女は女だけで遊んどけや!
ここは俺の秘密の場所や!」
「釣りくらい私だって出来るもん!
雪之介、その竿貸しなさいよ!」
「いけません、るん様!その竿よりも、エサはこちらの煮干しの方が…。」
「何よ、エサがなんだって言うの?」
「るん様!釣り針の先を見ちゃ駄目!」
「え?エサが何…って…。
キャー!ミミズ~!!!」
「だから女は誘いたなかったんや!」
「嵐くんのバカ~!
うわぁ~ん!大嫌~い!
もう、帰る~!」
そう、私をビックリさせる為にミミズを見せたんだと思ってた。
みんなで私にイタズラしたんだと思って泣いて帰ろうとした時…。
「アホ!そこは岩が緩いんや!待て!」
「何?キャー!」
そう、私は川に落ちて溺れた。
直ぐに助けられたけど、お母さんは静伯母さんに対して激怒した。