「ちょ、何で翠伯母さんまで私と嵐をそういう風に見るの?そりゃ同い年だけどさ…。」
パパから両親を亡くした嵐を引き取る話は伝わってるはずだけど、翠伯母さんはそれ以上に嵐を知っている雰囲気だった。
「そっかぁ、るんちゃんまだ小さかったもんね…。」
まただ。嵐の母親の静叔母さんの葬儀に向かう時、私のお母さんも小さい時の私と嵐の話をしかけて止めた。
そして私もお母さんが運転する車中で小さい時の夢を見ていた。
駄目、思い出せない。
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「お邪魔しま~す。
おばあちゃん、こんにちは、るんです。」
「いらっしゃい、るんちゃん。
大きくなったねぇ。
るんちゃんが一番鮎兎に似てきたねぇ。」
「ありがとう、おばあちゃん。
私も自分が一番パパに似てると思うんだ!」
トヨ子おばあちゃんは変わらず元気だった。
翠伯母さんが心配する様な雰囲気は全然見られなかった。
田舎の一軒家。古き良き日本家屋の象徴とも言える「縁側」。
トヨ子おばあちゃんも大好きだが、私はおばあちゃん家の縁側も大好きだった。
家と庭との曖昧な境界線。
広大な屋敷とは真逆のこの雰囲気が大好きだった。
縁側に座っていれば、家の中なのに外の空気が味わえた。
おばあちゃん家に到着するなり、挨拶そこそこに縁側に座り込んでしまった。
世代の違う女三人の会話は突然始まり、話に花を咲かせるのにご馳走は必要なく、庭の植木と緑茶で十分だった。
「え~?パパがガキ大将だったの?意外~!
今じゃ専務なのに、殆ど会社に行かずに掃除と洗濯ばかりしてるのに~。」
「ホント、鮎兎は学生時代は家の手伝いなんて何もしなかったんだから!
『母ちゃん、飯!』『姉ちゃん、小遣い!』
しか言わないんだから!」
「ウソ~、パパって学生時代から物腰柔らかな中性的な紳士だと思ってたのに…。」
「勉強もスポーツも、そこそこ無難にこなすから熱くならない子でねぇ。
鮎兎が変わったのはやっぱり桜子ちゃんと出会ってからよねぇ。」
「ホントに、バカ息子に相応しいバカ嫁が来るんかいなぁ~思ってたら、まさか婿入りするなんて、バカも休み休み言えって、亡くなった主人が…るんちゃんのおじいちゃんが初めてあいつを叱ってなぁ~。」
「もう、お母さんたらいつもその話ばっかり!
桜子ちゃんの情熱に心打たれてお父さんを説得したのはお母さんでしょ!」
「ちょっと何それ?お母さんの方がパパにラヴラヴだったなんて初耳ー!?」