「れ、麗香お嬢様…?」
「誕生日プレゼントに新車を買って貰おうか迷ったけど、私はやっぱりお父様が運転し続けたこの軽に愛着があってね…。
譲ってもらったわ…。」
困惑する雪之介をよそに、麗香お姉さんは淡々と話した。
「るん、早く乗りなさい。
たまには私に姉らしいことさせなさい!」
「麗香様、免許取り立てでは夜明け前の運転は…。」
「なら、貴方も乗りなさい!
私達を守るのが使命でしょう?
大丈夫、お母様には雪之介に責任はないこと伝えるから。」
「はっ…。かしこまりました。
お供させて頂きます。」
姉の横に座るなんて堪えられず、私は後ろで二人を見ていた。
普段見られない雪之介のたどたどしさに申し訳ないけど気分爽快だった。
あぁ、凛子お姉ちゃんにも見せたかったなぁ…。
「こんなに直ぐに免許取ったってことは、お姉さんはやっぱり進学しないの?」
「実戦に勝る経験なしよ。
4年も無駄にするつもりはないわ。
世の中には高卒でもニューヨークで23億稼ぐ日本人が居るわよ。」
「それ、プロ野球選手だし!
頭いいのに大学行かないなんて勿体無いなぁ…。」
「頭がいいかどうかは、グループの子会社の社長としての実績で判断してほしいものね。
確かに社交界でも学歴批判する者は居るだろうけど、少しくらい相手に攻める隙を作っていた方が何かと有利よ。」
「ふ~ん、お姉さんってやっぱり凄いな…。現役高校生で子会社の社長なだけある…。」
「あぁ、わざと隙を作るってのは夜の営みでも使えるから、るんも恋人が出来たら憶えときなさい。」
「だから何でいつもそっち方面に持ってくのよ!
そういう話は雪之介にしてよ!」
「わ、私は…。」
こんなに赤面する雪之介は超レアだよ!
任務とか使命じゃなくて、雪之介はお姉さんのことが好きなのが丸わかりだ。
麗香お姉さんは雪之介の事を部下としては信頼してるだろうけど、一人の男としてはどうなんだろ?
勉強もルックスにお料理の腕前に男として問題ないけど…。
「あら、雪之介。今日の貴方はヴァー○ンを捧げる少女みたいね。」
そっか、麗香お姉さんに取って、男として問題ないんじゃなく、男だから問題なんだね…ややこしいなあ!!
いや、もしかすると麗香お姉さんも雪之介への気持ちを隠してるから?
長女と次女ってだけで何でこんなに直球な恋愛と窮屈な恋愛と違いがあるの?
助手席の雪之介は、今絶対に任務を忘れてるよ!