舞は麗香お姉さんをナイフで切りつけた。
姉さんが紙一重でかわした途端、お付きの雪之介が割って入る。
雪之介の平手打ちを喰らった舞は吹っ飛び、教室の机を二、三個倒して倒れた。
雪之介は舞の少し茶色い髪を無造作に掴んで無理矢理立たせ、そして机に顔を押しつける。
「女!麗香様の命を狙うとは…。
どこの手の者だ、吐け!
四葉か?三光グループか?
他の仲間は何処だ?」
普通なら三年生男子の雪之介が一年女子に暴力を振るってるなんて、異様な光景なんだろうけど…。
これが相野学園なんです。
これが相野学園に君臨する私の姉、相野麗香なんです。
教室の誰もが何も言わない。
目の前でクラスメートが殴られてても、みんな下を向いて黙ってる。
これが相野学園なんです。
でも、ただ一人…。
「おい、るん。
何やねん、この状況?」
と、数日後に転校してくる予定の嵐が私に聞いた。
「あ、あんたにはわかんないだろうけど、相野家に生まれた者として、誘拐や脅迫は当たり前なの!
でも…。」
「雪之介!もう止めて!
舞は私の親友なの!
貴方の力で殴ったら死んじゃうよ!」
雪之介が姉さんの命令で動いてるのはわかってる。
私が姉さんを止められないのもわかってる。
でも黙って見てられなかった。
「るん様、申し訳ございませんがこればかりは聞けません。
刺客がまだ隠れてるやも知れません。
麗香様やるん様に危険がある以上、私は…。」
「舞が刺客なわけないでしょう!
私の親友なの!
ほ、ほら…今度のライヴの作詞や作曲で煮詰まってストレスで…。」
我ながら苦しい言い訳なのはわかってた。
顔が腫れて口の中を切っても、舞の目は鋭く姉さんを睨み続けてたのだから…。
「るん、麗香さんは命を狙われたんや。
命助かっても、顔に一生の傷残る所やってんで。」
「でも…。」
「雪之介さん、その子はもう無抵抗やし、おんなじ事繰り返しても口は割らんでぇ。」
「雪之介、嵐くんの言うとおりよ。
私に任せて、貴方は控えなさい。」
「し、しかし麗香様…。」
「控えなさい、雪之介!命令よ!。」
姉さんに一喝され、舞から手を放した雪之介。
嵐は離れた雪之介に声をかける。
「雪之介さん、あんたのその手は美味い玉子焼き作る為やろ?」
「嵐様…。」
でも姉さんは舞を許してなかった。四階の窓を開けて、舞の上半身を乗り出させる。
そして舞の制服のスカートに手をかける。続