翌朝。相野嵐にとって相野邸で始めて迎える朝。
「おはよう、嵐くん。」
「え!?お、おはようございます、叔父さん!
何で叔父さん自ら僕を起こすんですか?」
「あぁ、雪之介は朝食の支度が。
月之介は君の鶏子君の世話に忙しくてね♪
それでも家族を起こすのは昔から僕の役目さ。
それよりも客間の寝心地はどうだった?
今日の昼には荷物は届くから、嵐くんが学校から帰宅するまでには、部屋の形を整えておくよ。
後で使いやすい様にアレンジするといいよ♪」
「え?
それも叔父さんが?」
「うん、桜子はCEOとして会社を守る。
婿養子の僕が相野邸を守る!
それが何か?」
「い、いえ…。亡き両親に負けない素晴らしい夫婦仲だと思います…。」
「若いのに無理しなくていいよ♪
名ばかり専務は専業主夫って思っただろ?
通信機器の発達で在宅で出来る仕事も沢山あるからね♪
ぶっちゃけ、会社なんて優秀な部下に恵まれたら、執行役員なんて暇なもんさ。」
「…その『優秀な部下』を育てたのが鮎兎叔父さんなんですね。
生前の父から話はいつも…。」
「桜子は何でも自分でしないと気が済まない性格だし、るんとの旅の道中で気付いたと思うが、何せ、じっとしていられない性分でね♪
まぁ、CEOの職務なんて顔見せが殆どだけどね。
さぁ、みんなが待ってるよ。
朝ご飯にしよう!」
***
「おはよう嵐くん♪
眠れた?」
「ええ、ぐっすりと…。」
「環境が変わると大変よねぇ。
叔母さんがいつでも添い寝してるあげるからね♪」
「止めてよお母さん!
パパや私も居る前で!」
「大丈夫だよ、嵐くんにるん。
そこは夫婦の営み優先で僕が寝室で死守するから♪」
「るん、『ふーふのイトナミ』って何あるか?分かりやすく教えろ。」
「凛子お姉ちゃんにはまだ早いからいいの!」
「あ~、姉を子供扱いするなといつも言ってるのに!
体型が子供なのはるんの方ね(笑)。」
「嵐、お前の田舎で牛飼ってなかたか?るんにミルク飲ませたいね。」
「牛はちょっと…。」
「るん様、凛子様の愛情溢れるご冗談はこのオムレツに免じて…。」
「雪之介、これってまさか…?」
「はい、今朝、嵐様がお飼いになられてるニワトリが産んだ卵です。
今朝、月之介が取り上げ、私が調理致しました。」
「ふぅ~ん、これから毎朝新鮮な卵が食べられるなんて、『家賃』としてはまずまずね…。」
「麗香お姉さん…。」