さてと、原稿は上がったし、ママには報告したし(14話参照)、あとは…。
目先の欲に眩んだバカ一名と、自己犠牲が友情と勘違いした我が親友か…。
まぁ、仕方ないか。
幼い頃から主家の後取り息子に尽くす為だけに生きてきたんだから…。
私との友達関係だって、南部ちゃんは「自分が何とかしなきゃ!」って思い過ぎよ…。
でも、時に彼女の真っ直ぐさに救われたこともあった。
あれから3ヶ月…。
お泊まりの夜のお礼をするなら今だけど、最初から私が手出ししたら、南部ちゃんの成長を妨げるのよね~。
プロサッカー選手として、いつかドイツの瑞穂と二人でジャパンブルーのユニフォームを着て、同じピッチに立ってほしいから…。
そしてそんな貴女達と同じ高校生活を送れたのは私の一番の宝物なんだから…。
だからこそ、プライベートを叩かれることには今のうちから免疫付けててね♪
大丈夫、助っ人は用意しとくから…。
あぁ、もう!あたしって、だからみんなから「ドS」って呼ばれるのよねぇ。
受話器を取り、慣れない番号をプッシュする。
相手は直ぐに私とわかったのは意外だった。
「…もしもし…。はい、はい。島です。お久しぶりです。
…と、いうわけで、私からってのは内密に…。
それと貴方が直接動くのも悪いですので…。
…はい、はい。いいんです。
遠慮なく使ってやってください♪」
受話器を置き、皆の暖かさに泣きそうになる。
私はもう一人じゃない…。
****
「島さんの小説は完結されたのですね!
おめでとうございます!
最新号も早速読ませて頂きました!」
浦和のクラブハウスに、南部彩を訪ねた男が居た。
そして…。
「お、大島さんでしたね…。申し訳ございません、そのような事はクラブ広報を通して頂かないと…。」
親友にて作家の島敦子の担当編集ということは承知していた。
しかし、プロ選手として勝手な身動きが出来ないのも事実だった。
「本当に時間は取らせませんよ。
南部さんは、志磨子先生の作品「包囲磁石」に簡単な推薦文を書いてくださるだけでいい。それだけで我が『月刊拘束通信』は売り上げ倍増だよ!
二人の友情の証としてさ!志磨子先生の未来は南部さん次第なんだよ?」
「は、はい…了解しました。では、自分から島さんに連絡を…。」
「だ、駄目だよ!先生は印刷会社と打ち合わせが…。
さぁ、そうと決まれば僕達も打ち合わせだ。都内のホテルに部屋を取ってある」