志磨子の小説内小説「包囲・磁石」21 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ほとぼりが冷め、野次馬が赤色燈が輝く車を見つめる。

「随分派手にやったじゃねぇか、カズ?狂犬の最後らしいじゃねぇか?」

ベテラン刑事は和夫の肩を叩く。

「近藤のおやっさん、狂犬カズとしては確かに最後ですが、ただの田中和夫としてはこれが始まりですぜ。」

店を襲撃した麗都の集団が警察に連行されるのを、何処か他人事のように見つめ、静かな笑みで近藤と呼ばれるベテラン刑事に答えた。

「始まりか…上手く言うじゃねえか。
それ、刑事らしく俺が言ったことにしろよ。」

軽妙な会話は親子のようであり、監督と選手のようにもみえた。

「おやっさんには、刑事らしい仕事があるじゃないですか…。
俺にワッパをかけれんのは近藤のおやっさんしか認めねぇ…。」

ほら、とばかりに両手を差し出した所に、堪らず友子が割って入る。

「待ってください!
和夫を、和夫を連れていかないでください!」

「全く、この時ばかりは、お上を恨みたくなるねぇ…。因果な商売だ…。」

「安心しな!友子。直ぐだ…。直ぐに帰ってくる。」

右手の親指で泣きじゃくる友子の涙を拭う和夫。

そして辛さを見せまい、と背中を向ける。

「待ってる!私、和夫の帰りを待ってるから…。」

「…友子…一つだけ頼みがある。
俺からの最初で最後の頼みだ…。」

「なあに?私、なにをしたらいいの?」

「何もしなくていい。それが頼みだ。」

え?と言った表情で友子が不思議に見つめる。

「友子、俺に申し訳なく思ってるか知らねぇが、せっかく綺麗になったんだ。お前は今のお前でいい…。」

「和夫…本当に?こんな私でいいの?」

「あぁ、見違えるほど綺麗になったな…って整形したら当たり前だが…その…昔を否定…すんなよ…。でも、瑠璃子も狂犬も今日が最後さ…。」

「和夫のバカ!ホストなんて似合わないんだから!地元の銀行内定貰ってたクセに!」

「また受かりゃいいんだよ!お前こそ保母さんは?」

「これからよ!」

「あぁ、綺麗なお嬢さん、すんませんがそろそろ…。」

「和夫、ガラスを割った罪ってどれくらい?」

「器物損壊の略式起訴だろうから、明日の昼には帰る」

「本当にお前がやったんだな?」

「へい、あっしが割りやした。」

(包囲磁石・完)

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「う~ん、終わった~!
和夫も友子ちゃんに我が子達よ!お疲れさまでした!

コント落ちにGoを出す大島編集に期待ね!
(続く)