ほとぼりが冷め、野次馬が赤色燈が輝く車を見つめる。
「随分派手にやったじゃねぇか、カズ?狂犬の最後らしいじゃねぇか?」
ベテラン刑事は和夫の肩を叩く。
「近藤のおやっさん、狂犬カズとしては確かに最後ですが、ただの田中和夫としてはこれが始まりですぜ。」
店を襲撃した麗都の集団が警察に連行されるのを、何処か他人事のように見つめ、静かな笑みで近藤と呼ばれるベテラン刑事に答えた。
「始まりか…上手く言うじゃねえか。
それ、刑事らしく俺が言ったことにしろよ。」
軽妙な会話は親子のようであり、監督と選手のようにもみえた。
「おやっさんには、刑事らしい仕事があるじゃないですか…。
俺にワッパをかけれんのは近藤のおやっさんしか認めねぇ…。」
ほら、とばかりに両手を差し出した所に、堪らず友子が割って入る。
「待ってください!
和夫を、和夫を連れていかないでください!」
「全く、この時ばかりは、お上を恨みたくなるねぇ…。因果な商売だ…。」
「安心しな!友子。直ぐだ…。直ぐに帰ってくる。」
右手の親指で泣きじゃくる友子の涙を拭う和夫。
そして辛さを見せまい、と背中を向ける。
「待ってる!私、和夫の帰りを待ってるから…。」
「…友子…一つだけ頼みがある。
俺からの最初で最後の頼みだ…。」
「なあに?私、なにをしたらいいの?」
「何もしなくていい。それが頼みだ。」
え?と言った表情で友子が不思議に見つめる。
「友子、俺に申し訳なく思ってるか知らねぇが、せっかく綺麗になったんだ。お前は今のお前でいい…。」
「和夫…本当に?こんな私でいいの?」
「あぁ、見違えるほど綺麗になったな…って整形したら当たり前だが…その…昔を否定…すんなよ…。でも、瑠璃子も狂犬も今日が最後さ…。」
「和夫のバカ!ホストなんて似合わないんだから!地元の銀行内定貰ってたクセに!」
「また受かりゃいいんだよ!お前こそ保母さんは?」
「これからよ!」
「あぁ、綺麗なお嬢さん、すんませんがそろそろ…。」
「和夫、ガラスを割った罪ってどれくらい?」
「器物損壊の略式起訴だろうから、明日の昼には帰る」
「本当にお前がやったんだな?」
「へい、あっしが割りやした。」
(包囲磁石・完)
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「う~ん、終わった~!
和夫も友子ちゃんに我が子達よ!お疲れさまでした!
コント落ちにGoを出す大島編集に期待ね!
(続く)