志磨子の小説内小説「包囲・磁石」1 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「大島さん、どうですか?
一話は興味を引くために少し過激にしました。」

担当の大島さんは口角を上げて笑みを浮かべる癖がある。
今回も合格かなぁ?
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テスト期間中の放課後の体育倉庫は誰も居なかった。
疑いもせずに彼らに着いてきた私がバカだった。

「イヤ!やめて!
助けて!誰か~!」
クラスの男子数人に騙され、暗がりのマットに押し倒される私。

恐怖で意識を失いそうになるが、それ以上の恐怖が待っていた。

「オイオイ、お前らホントに誰でもいいんだな。
俺はこいつの顔じゃ無理だわ。」

貞操の危機に関わらず、更に自分の醜い容姿を侮辱された。
リーダー格の男子は私に頭から学生カバンを被せ、他の男子に私の手足を抑えつけさせ、行為に及ぼうとした。
その時…。

「お前ら!
友子に触るな!」

和夫がケンカもしたことないことくらい、私が一番知っていた。
だが死に物狂いの男と、女にしか暴力を振るえない坊っちゃん連中とでは勝負にならなかった。

「田中!チクッたらお前らも同罪だからな!
不倫カップルの子供が!」

捨てセリフを吐いて逃げる男子達。
だが間違って居なかった。

私の母と和夫の父は、禁断の恋の末に自ら天国で結ばれることを望んだのだから。

恩人に、一生の恩人の和夫に私は感謝しなければならないのはわかってた。
でも、私は優しく抱き締めてくれる和夫を、優しくキスしようとしてくれる和夫に平手打ちをして

「何で私なんか助けるのよ!
あんたのせいでイジメられるんでしょ!
私なんか放っておいて!」

と、罵詈雑言を吐いてしまった。
そして卒業しても和夫と口を聞かず、音信不通になることを願ってしまった。
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「滑り出しとしては最高だよ、志磨子先生!
これならティーンの読者も掴めそうだよ。」

「掲載雑誌が18禁ならティーンの読者は無理でしょ?」

「そこは俺の力に任せてください!」

「はいはい、期待せずに待ってま~す。
じゃ、私は大学のレポートがあるからそろそろいいかな?」

「あぁ、ごめん。俺は島敦子の学業は絶対に邪魔しないから!」

「うん、ありがとう。」

4月は出会いと別れの季節。
デビュー前から私の面倒を見てくれた、偏愛文庫の大島さんは「月刊・拘束通信」に異動になった。
私はお礼を込めて半年の連載を承諾した。

「もう、大島さん話長いんだから!南部ちゃんのデビュー試合が始まっちゃうじゃない!」
続く。