「しかし、いくら追っ手から逃げる為とはいえ、古代の秘法を使ってまで人間から妖になることを選ぶとは、ユダヤ、いやいや天狗族は奇特な一族だな。
我ら妖狐族の中には、『人化の術』を求めて人間を目指した者もいたのにな…。」
明日香さんに飼われて(?)から沈黙してた(彼は最初から寡黙ですが)井成くんが話出しました。
しかし、即座に明日香さんが茶々を入れます。
「狐さんって、宝物探しが好きなのね!
神様の使いのお稲荷さんじゃ満足出来ないの?」
「『これでいい』と思えないのは妖狐の…いや、どうせ俺の長所であり短所だよ、明日香さん。」
「ふ~ん、だからって私という『宝』を求めながらも、いつかその内私にも満足しなくなるんじゃないの!?」
握っていた手を大袈裟に放し、プイッとそっぽ向く明日香さんは女性の私から見ても可愛いです。
そして人間の姿で遠慮なく会話する彼女はとても自信がある女性に見えます。筆談で会話してた時とは別人のようです。
それは勿論、井成さんの幻術のおかげなのですが…。
「明日香さん、どうか用高には寛大なお心で…。『これでいい』と思えない用高の性分は、消防士としての安全意識の啓発に役立ってますので…。」
年長者として井成さんをフォローする河童の河野さん。
それはとても大人の対応です。
「妖狐は火属性だからね。『渇く』感情が欲張りになっちゃうだろうさー。明日香さんも用高を大目に見てやってよー!」
あくまで可愛い(?)アピールをする天狗の蔵間くん。さっきまで悲しいユダヤと源平物語を語ってたとは思えないです。
「猶利…。浄一郎が言うには許すが、年下のお前が、俺を知った風に言うなと言ってるだろ!天狗はホントに上から話すから嫌われるんだよ!」
「ちょ、やめなさいよ用高!」
立ち上がって、9つの尻尾を見せる井成さん!また狐火ですか?
「ふん、狐火なんて、『来る』とわかってりゃ怖くないさ!風属性の僕は『天狗の団扇』で火を消してやる!」
「蔵間くんもやめて!」
スーツの内側から取り出した万年筆は突如大きくなり、団扇に変身したです。
妖怪のトップ同士の喧嘩なんて、天使の力を解放しないと止めれないです!
と思った時!
「やめんか!お前らいつもいつも!レディの前くらい自粛出来んのか!」
そこには筋骨隆々の赤い肌…いえ、躊躇なく身長3メートルの鬼の姿を解放した鬼頭さんが二人の襟首を掴み宙吊りにしたです。