「赤い顔に高い鼻。確かにそれだけじゃ、天狗族がユダヤ人って説には弱いよね。」
23歳よりかは幼く見える蔵間猶利(くらまゆうり)さんです。
その若さでシステムエンジニアとして会社経営してるのは立派ですが、日本古来の高位妖怪が、ユダヤにルーツがあるとは驚きです。
「そういえば、歴史好きなウチの後輩も、『仏像のカーリーヘアも西洋人の高度な文明を崇めたから』って言ってたけど、それに近いのかな?」
ウリエルはきっと近藤くんの事を言ってるです。
人間界の歴史に興味ないと、天界では不勉強だったくせに、最近は私にもいろいろと質問してくるですし、ウリエルが近藤刑事の影響を受けてるのは明白です。
「その後輩さんはなかなか詳しいね。
高度な文明を持つ他民族が神や天使扱いされるのは世界中に例があるしね。
紀元前721年、北イスラエル王国はアッシリア帝国に征服された。
ユダヤ人12部族のうち、10部族は世界中に散り散りになったと言われるが、シルクロードと通って日本にたどり着いた者達もいる。卑弥呼の時代の500年も昔にね…。」
「え~、そんな昔から日本に居たんですか~?」
「でもユダヤの人は白人で日本人は黄色人ですよね?
やっぱり違うんじゃ?」
「それには諸説あるけど、ユダヤ伝統の文化を持ち込んだ渡来人が居たってのが有力かな?
例えば『馬』だって大陸から伝わった者なんだぜ。
勿論、野生の馬は日本列島に居たかもしれないが、それに乗って、飼って、生活の手段にするって考えは大陸から伝わったものさ。
例を出せば、帝(みかど)は、ヘブライ語の『ミ・ガド』からって説が。これは10部族の一つ、『ガド族から~』って意味だし、生後30日目に初詣に行く習慣は日本人とユダヤ人しかいない。
また遣隋使に参加し、大化の改新に尽力した渡来人系の三人、高向玄里、僧の旻(みん)、南淵請安は歴史の授業で有名だ。特に旻は637年の流星を『天狗の吠え声』と、当時の天皇に報告するなど、占いや天文に優れていた。
そして二人は帰国後に国学博士となったが、南淵請安だけは新政府に入閣しなかった。
それは隋で亡くなったとされるのが一般だが、実は帰国していて日本のとある山にユダヤ民族の集落を作ったのさ。勿論、ある悲劇の英雄を使役をして歴史の表舞台に出てくるのは500年くらい先だけどね。」
「悲劇的英雄って?」
「鞍馬山で天狗から剣術を習った牛若丸、つまり源義経さ。」続