「え?蔵間くんてフェニキアの歴史に詳しいの?」
筆談ではなく、自らの声で質問する明日香さん。
その声は自信に溢れたトーンです。
他人がその人のコンプレックスを「大したことない」などど誰が言えるですか?
それは明日香さんがソロモンの悪魔でも、フェニキアの守護鳥でも関係ないです。
現に天使である私でさえ、嫉妬や羨望から脱却出来ずにいるです。
「本当の言い伝えは、『フェニックスの美しい詩と歌声を聞き続けても、自我を保てた人間には科学の恵みを与えるだろう』が本当の意味だよ。
これは、『文学と歴史を学ぶ者には、理系の恩恵がくる。』って意味で、文学や歴史は常に過去を探求することにあり、科学は未来を見つめる。
『高度な文明でフェニキアの繁栄を願うならば歴史を学べ』って温故知新を諭したただの民族規律さ。
そして戦地に向かう勇者達は、『俺が戦死することはない。フェニキアの守護鳥がついているから』って、戦争に対する恐怖に打ち克つ伝承が不死鳥伝説になったんじゃないかな?」
「蔵間くん、ホントに詳しいわね。
じゃあ、まさか私の醜い声ってのは…。」
「『人間の姿に化けて、復活させるに相応しい英雄を見抜くため』って、ひいじいちゃんは言ってたけどな♪
ほら、昔話によくあるじゃん。
普段はみすぼらしい格好してる人が実は仙人だったり、神様だったりって。」
「あ~、あるある。
つまり、復活に値する勇者はただ強いだけでなく、言葉を話せない女の子にも愛情を持って接する優しさも持ち合わせていないと、守護鳥の眼鏡にかなわないってことね、わかるわ!」
(ふ~ん、ラファエル姉さんには耳が痛い話じゃない?かつて、魔王アスモデウスを、トビアくんと倒したのに、トビアくんは順当にサラちゃんと結婚したもんね~。)
(ウリエル、古い話を持ち出すなです!
私は旧約聖書に書かれるほど古い話は忘れたです。
それに私は天界の使命でアスモデウスを退治しただけで、トビアさんはただのパートナーです。個人的想い入れがあるわけないです!)
(はいはい、ラファエル姉さんってホントに見る目がないんだか、ありすぎるんだか…。)
以上、高速念話終了。
「…と、まぁ旧約聖書を書いた側にしてみれば、死を恐れない軍隊に高い文明を誇るフェニキア人は恐怖だった。その守護鳥フェニックスを悪魔の象徴とするのも無理はないさ。」
「ホントにに詳しいね?」
「天狗はユダヤ人がルーツだからさ。」