いつまでも、いつまでも繰り返される地獄。
鳳明日香の醜い声を聞かされ続け、堪え忍んだと思えば時間が戻り最初から聞かされる。
不死鳥の逆鱗に触れた俺には死ぬことさえ許されなかった。
俺にまだ僅かに残る、主観的な時間の感覚で判断するなら2週間は過ぎただろうか?
その声、いやその歌は突然聴こえた。
「かごめ♪
かごめ♪
籠の中の鳥は♪
いついつ出会う?♪
夜明けの晩に♪
鶴と亀が出会った♪
後ろの正面だぁれ?」
気がつけば俺は真っ暗闇の何もない空間に佇んでいた。
男も女も、店のスタッフも居なかった。
ただ聴こえるのは誰もが知っている童歌。
散々聞かされた醜い声の反動もあったが、その声はとても美しかった。
「ねぇ、質問に答えてよ♪『後ろの正面だぁれ?」
それは同じ声の主とは思えぬほど、優しく暖かく、そして大人の女性ながらもどこか幼さの残る凛とした声だった。
もう俺としてはただ解放されたい一心でその名を呼んだ。
「…お、鳳明日香さん…。」
「はぁ~い、大正解♪
良かった~♪もしも私のことを『不死鳥』とか『フェニックス』って呼んでたら、あと200年は放置プレイ決行しようと思ってたのに♪」
「お、おい趣味の悪い冗談はよせよ。」
「妖狐の狐火も十分悪趣味です!
じゃあ、問題その2。
『夜明けの晩』っていつ?」
「え…?」
「ね、おかしいよね?夜明けの晩なんて時間帯ないもんね。
そう、だからこそこの歌には時を超越する意味が込められてるのよ…。
私と貴方のようにね♪」
「じゃあ、今度は逆に井成さんの質問に答えてあげる♪
何でも聞いて。」
それが俺に対する怒りが原因か、鳳明日香の性格なのかはわからない。
だが『命と時間』さえも超越した『存在』を握られた俺には何の余裕もなく、ただ許しを乞うしかなかった。
「お、俺は…。」
「ふふ、安心して。
殺したり、永久に時間の輪に閉じ込めたりしないわ。
条件付きで許してあげる♪
貴方には利用価値がありそうだもの…。
やっぱりお互いに『火属性』は惹かれ合うのかなぁ?
ねぇ、最後の質問。用高さんはトラウマを映す狐火以外にも幻術は使えるんでしょう?」
「あぁ、女子トイレで俺の偽物を見せた様に、心の傷と関係ない幻も見せれるぜ。」
「それよ!フェニックスの鳥の姿の私に『鳳明日香』という幻術をかけて!
これで人間として喋れる!」