「グゥーイ!」
店内に響く耳を塞ぎなくなる様な叫び声。
不死鳥が正体のこの鳳明日香の醜い声を聞き、耐え抜けば俺は不老不死、即ち永遠の命を手にすることが出来る!
だが何という不快で醜い声だ!
魂喰らい(デスイーター)の声がカナリアの囀ずりに思えるぜ。
「ギゥウウ。ウゥ。」
「くっ、ホントに最上級のデス・イーターか…?ゲームでいうならドラクエの『ザキ』『ザラキ』レベルだな…。」
自分で仕掛けた術とはいえ、俺の狐火を相手に呑気に色恋に耽る連中に苛立ちを覚える。
狐火に魅入られたら外部の感覚も遮断されるから、この醜い声に苦しむのは俺だけだ。
命取りになりそうな音の最終兵器。
時々、諦めようかと心が折れそうになったが、彼女の身体がぼんやりと光を帯び始めた。
「やった!遂に不老不死を与える前触れだ!
さぁ早く…。」
まばゆい光と共に現れた真の姿。
それは確かな火の鳥であった。

「不思議なものです。
私は遥か紀元前を生きる悪魔でありながら、何故、転生前の記憶がないのかわかりませんでした。
ですが貴方のおかげで全てを思い出しました。
ソロモンNo.37の悪魔としての記憶も…。
私に不死鳥としての記憶がなく、21世紀に生きる人間・鳳明日香の記憶しかなかったのは、貴方の様に私から無理矢理、不老不死の力を得ようとした者が後を絶たないからだったのですね…。
井成用高よ。
それほど不老不死になりたいか?」
「当たり前だ!
絶対君主!
沈まぬ帝王!
不老不死になれば、西洋のバンパイアも中国の四聖獣をも出し抜ける!
俺は永遠を手にするのだ!」
「…永遠…?
死を忌む気持ちはわからなくありませんが、『生きる』がわかっていない貴方に『死』はもっとわからないでしょう。
天下?覇王?
そんなくだらない物の為に、私の友達の傷を汚い手で触らないで!
…いいわ…お望み通り永遠をあげる…。ずっと…。」
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「ふ~ん、女子ってやっぱりトイレでこういう会話してるんだ~。」
「キャー!」
(これは、少し前に俺が仕掛けた術…?)
「さぁ、鳴け!
泣いてみろ!」
(ま、まさか…?)
「ギィ!ウギィー!」
(ま、またあの声?!や、やめろー!!)
「あら、貴方が望んだ『永遠』ですよ♪」
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「ふ~ん、女子ってやっぱりトイレで…。」