オフィスの机で椅子を並べて食事をする二人。
深夜まで仕事をする原宗時に、手作り弁当を差し入れする北御門瞳様との、微笑ましい光景のはずだった。
しかし、度々視線を仮眠室の方に向ける原に対して、北御門様は異変を感じた。
先に席を立ち、仮眠室の様子を確かめようとする。
それを制止する原。
(ふうむ…。人間同士の茶番劇は保護対象ではありませんね…。暫く見守りましょうか。)
****
「私が仮眠室を覗いてはいけない理由でもあるのでしょうか?」
「すまない、今は駄目なんだ…。
理由は言えない…。
いや、きっと信じてもらえない。」
「原さん…。
私は今の今まで信じていました。
貴方がどんな人であれ、全てを受け入れるつもりでした…。」
「全て?
北御門さん、ご好意は嬉しいが僕は貴女が思ってるような…。」
「…貯金があります…。
ご希望とあらば望みの額で虎徹を購入させてください。
それが望みなんでしょう?
『本物』は国宝級で手出し出来ませんが、『あの贋物』くらいなら…。」
それはどこか覚悟を決めた強い眼差しだった。
「知っていたのですね!ならば何故、僕なんかに…?」
「伊達に雑貨屋で勤めてませんわ!
贋物を掴まされても、仮に貴方が結婚詐欺師でも構わない!」
「違う!虎徹をお譲りしたいのはお金が目的じゃないんだ!
その理由は…。
くっ、あともう少しで儀式は完成する所だったのに…。」
「儀式?それはあの仮眠室と関係あるんですか?
ねぇ、原さん。私は貴方が何処の誰であれ、私は覚悟は出来てます!
でも、他に女が居るのだけは許さない!」
遂に制止する原を振り切り、仮眠室のドアノブに手をかける北御門様。
その時、扉の向こうから女性の声が聞こえる!
「…様…。…何処?」
「女!やっぱり女が居たのね?」
勢いに任せてドアを開けた時、意思を持った刃が彼女を襲う!
「キャー!!」
一瞬何が起こったか、誰にも分からなかっただろう。
私が姿を消す術に長け、そして「瞬速」を発動させたからこそ、身を挺して彼女の盾になれました。
少々深く刺さりましたが…。
「あ、貴方は?
一体どこから?」
「貴女を知る者から警護を命ぜられた者です。」
だが膝を付き、痛みに耐える私を知る者が居た。
「バ、バティン様ではありませんか!?
何ということだ!
私が浄化に失敗したばかりに…!ソロモンNo.51バラム一生の不覚!」