オーバーフェンス33テッペキ!エピローグストーリー(次回最終回) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

13年後の現在

「こんにちは~、北条学園OBチームただ今到着でーす!」

「おう、立花くんに坂口くん!待ってたぜ。」

試合が朝から行われた為、祝勝会はお昼ご飯の時間に最適だった。
場所は北条学園からほどなく近い中華料理屋、試合の後は毎年ここでお世話になるのが慣例だ。」

「今年でもう10回目か?
この時間に来たってことは、今年はコールド負けじゃあなかったみたいだな?
九回持ったか?」

「はい、最後まで戦い抜きました!」

「ほう、そりゃ上出来だ。
二点くらい取れたか?」

「さあて…試合の結果は…どうぞ、こっちです!」

OBチーム代表の坂口さんに呼ばれ、三人の違うユニフォームを着た青年達が挨拶する。

「店長!今年は遂に負けてしまいました。
いやぁ、13年前と店も店長も変わりませんね!」

深々と頭を下げるのは徳川実業OBチームの牧野、千石、氏家の三人だった。

「13年前と同じくまたあいつ一人に打たれましたよ!
やっぱり北条はあいつが入ると別チームのように生まれ変わる。」

「お、おい、それじゃまさかホントに…。」

「ええ、今年遂に『三好秋彦追悼試合』に高坂漣が参加してくれたんです!」


「…店長…長い間ご無沙汰しています…。」

「漣くんか!?」

店の暖簾をくぐった、長身痩せ身のメガネの青年。
その両手にはしっかりと赤ん坊が抱かれていた。

「…娘の蘭です。
私の妻は勿論…。」

「お久しぶりです、店長!」

「柚子葉ちゃんかい?
いやぁ、あんなに大人しかった柚子葉ちゃんが遂に漣くんを射止めたか!
こりゃあメデタイ!」

「…ホントにこの二人を連れてくるのに、こんなに時間がかかるなんてね♪」

「まり姐。今までホントにありがとうね…。
私も漣も、まり姐のおかげで秋彦さんにいい報告が出来るわ。」

「私は何もしてないわよ。
みんなの秋彦を想う気持ちに支えられて…。」


柚子葉は秋彦が好きだった。
漣も柚子葉が好きだった。
しかし、三人の恋に答えが出ることはなかった。
彼らが三年生の夏、三好秋彦はある雨の夜にバイクの事故が原因で他界した。

それから二年後、奪われた若い命を哀しみ、北条学園野球部と徳川実業野球部の呼びかけでOB戦が行われるようになった。勿論、姉の真理亜の母校である聖バーバラ女学院も、奉仕活動の一環として協力している。

しかし今まで、秋彦に最も近かった漣と柚子葉は参加しなかった。続