オーバーフェンス21試合編15 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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九回表。
徳川実業5-3北条学園
ノーアウトランナー一塁。
先頭の六番打者を三振振り逃げで出塁を許したマウンド上の高坂。

だが問題は出塁を許したことよりも、高坂漣の豪速球が捕れなくなるほど手を傷めた捕手の石倉のことだった。

「…すまない。だが大丈夫だ。
もう、絶対に後逸はしない!
身体を張ってボールを止めるから…。」

「…いえ、石倉先輩、その手では無理です。
交代しましょう。」

「石倉、お前だけの問題じゃない。
捕手は控えの高村も居る。
交代だ。」

北条学園キャプテンでサードの坂口が負傷交代を審判に告げようとする。
北条学園の監督は座ったまま直接指示は出さない。
北条学園の控え捕手の高村が慌てて準備してる最中、審判に待ったをかけた者が居た。

「速球を受けるには技術と経験が必要だ。
その控えキャッチャーも恐らく同じ目に合うか、もっと酷い結果になるぜ?」

キャッチャーを交代させることに異議を唱えたのは、相手校の捕手千石だった。

「千石、ウチの采配にお前がどうこう言うことじゃないだろう?」

主将の坂口は千石に帰れと言わんばかりの態度だった。
だが千石は気にする様子もなく…。

「あのメガネがバッティングと外野守備だけでなく、投手としても一流なのは球を見ればわかる。
だが、だったらなんで1番をつけて先発させなかった?何故ライトを守らせる?
メガネの投げる球が早すぎるて、キャッチャーが捕れない、もしくは捕れても手を傷めてしまうのは、練習でわかってたからだろう?」

「…そ、それは…。」

捕手石倉も、主将の坂口も言葉に詰まる。

「どうやら図星みたいだな。
こっちにしてみれば、あんな速球を打てるチャンスは滅多にないんだ。
パスボールの連発で試合を潰してほしくないんだ。

…受けられるキャッチャーがいねぇなら、俺が受けてやるよ…。」

それは徳川実業の捕手千石からの予想外の申し出だった。

「お、おい千石?」

「ウチの監督も了承してる。
これは練習試合だ。
お互いの技術向上が一番の目的だろ?
俺がそっちに入って、ウチの牧野の球はウチの控え捕手を出す。

なぁに、結局は一捕手のエゴさ。
あいつの球を自分のミットで捕りたい。
それだけさ…。」

「し、しかし…。」

「坂口先輩、千石さん。
その必要はありません。
僕がマウンドを降ります。」

「高坂…?」

「ピッチャーは秋彦でキャッチャーは僕がします。」続