オーバーフェンス18 試合編12 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ウラをかく高坂漣と三好秋彦のバスターエンドラン!
打球がゴロで一、二塁間を抜けた時には、既に秋彦は二塁を回っていた!

「早い!あのチビ一年…が!」

「僕が高坂くんに負けてないのは足の早さと…。」

「凄~い、早い早い回れ~!」

先ほどまでの空中戦と打って変わって、コンマのタイミングを競うスピード合戦。
応援を贈る女子も白熱する。

徳川実業のライト、氏家がボールを掴んだころには秋彦は三塁にまで達してたが…。

「おい、三好!止まれ!」

「流石に無茶だよ、それは!」

三塁コーチャーの制止を振り切り、ホームに突っ込む秋彦。

ライト氏家は、高坂へのリベンジとばかり、ノーバウンドのバックホーム送球をする。
徳川実業レギュラーとして、意地の返球だった。

本塁を死守するのは四番打者でもある捕手の千石。

体格の差は明らかだし、氏家の送球は逸れることのないストライク返球だった。

誰もが「危ない」「無茶だ」と悲鳴が上がるなか、二塁を陥れたバッターランナーの高坂だけは静かに

「行け…。」

とベース上で呟いた。

タイミングは完全にアウトだった。
クロスプレイどころか、捕手千石は完全にミットにボールを治めて待ち構えていたが…。

彼には本塁を死守する男は、徳川実業の捕手千石ではなく、柔術を強要された実の父に見えていたのかもしれない。

秋彦はアウトのタイミングを百も承知で、小柄の体を更に前傾させ、プロテクターとミットに守られた捕手の体の中心線を目掛け、左肩から思いっきりタックルに行った!

「これが答えだ!クソ親父!」

「秋彦!」

フェンス越しに真理亜が絶叫する。
得点云々ではなく、弟が怪我しないかしか頭になかった。

「ガツン!!」

という音が耳元で聞こえそうな衝撃音が響き、両者がグランドに倒れこんだ。

捕手千石はボールをこぼしていた。
起き上がったのは二人とも同時ぐらいだったが、一瞬ボールを見失った千石より早く、秋彦はホームベースにタッチし、得点は認められた。

「やった~!」

それは高坂の二本のホームラン以上にグランドは歓喜の声を上げた。

プレーは一時中断し、捕手の千石が

「やられたぜ、ガッツだけは一人前だな一年坊主!」

と握手を求めたくらいだ。

両軍ベンチとファンから拍手が起きる。

ひっそりと応援していた朝倉柚子葉も

「三好くん凄い!」

と声をあげる。

高坂漣は少し悔しがっていた