オーバーフェンス 9~試合編 3 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ホームランや刺殺プレイでは両軍に歓喜と驚嘆をもたらした右翼手の高坂漣であったが、たった今行われた「ライトゴロ」という稀有なプレイをやってのけた彼に対して両軍ベンチと観客は、沈黙によりそのプレイを評価した。

一塁ベースで両膝をつき、愕然とするバッターランナーの氏家くん。

北条学園の一塁手が彼の肩をグラブで軽く叩き、

「悪いな、ヒット一本損したな。」

と声をかけた。これにより沈黙は破られ、場内は改めてどよめきだした。

観客側から真っ先に声を上げたのは、加納弥生だった。

「今のは、相手が凄かったんだと思いますー!次、頑張ってくださーい!!」

と、声をかけたから、彼もライトフェンス側に一応手を振ってから引き上げる。

これがまた徳川実業ベンチの怒りを買った。

「オラ、打球が抜けただけで気ぃ抜くからライトゴロなんて無様なプレイになるんだよ!」

「そうだ、死ぬ気で走れ!」

「だからお前はいつまでも※ライパチなんだよ!」

※ライトで八番打者。スタメンの中では攻守とも一番使えない選手。転じて日常でも役立たずを表す意味に使用される。

「聖バーバラの女子ばっか見てっからだよ!」

「す、すみません。」

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それでも高坂漣は喜びを表現しなかった。
ポーカーフェイスというより、少し苛立ちを隠した佇まいだった。

「ねぇ、今日の高坂くん少し怒ってない?」

「徳川実業だから気合い入ってるだけ…?じゃなさそうよね…。」

「やっぱり、あの聖バーバラの人達と関係あるのかな?『応援に来るな』と言ったとに来たからとか…?」

「じゃあ、やっぱり彼女じゃない!どの子だろう?」

「最初はあの巨乳かと思ったけど、あの不思議ちゃんかも?徳川実業の子を応援するって逆に怪しくない?」

「あり得る!うわぁあざとい!さすがお嬢様学校ね。」

「そうよね~。」

と試合よりも勝手な噂で盛り上がる中、高坂漣は更に観客を刺激することをした。
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三回裏二死ランナーなし。

未だに一点負けてるが、彼のプレイによりチームは何とか王者に食らいついていた。

(瑞穂よ、お兄ちゃんはこんなに頑張ってるのに!お前の約束通りホームランも打ったのに!
この姿を見せたかった!
だが、悔やんでも仕方ありません。
僕は僕で楽しませてもらいます。)

バットをかざしてのホームラン予告。

「応援に来てくれた聖バーバラ女子達にホームランを捧げます!」続