

(参考画像はSHINJO選手です。)
しかも、右打席の彼が、華やかな女子達が陣取るライトフェンスを指したから余計に驚きだ。
右打者が力任せに打球を引っ張れば、当然レフトに打球は飛ぶ。
プロの世界でも逆方向のホームランは極端に少ないのである。
「おい!高坂!何考えてんだよ!練習試合とはいえ、相手は徳川実業だぞ?」
味方の北条学園ベンチから野次が飛ぶ。彼はまだ一年生だから、上級生には鼻持ちならない所もあるのだろう。
「そんなの決まってるじゃあありませんかか?『お綺麗な方達との祝勝会』ですよ!」
「キャ~、私達の事綺麗だって~!」
「違うわよ!聖バーバラの子達を言ってるんだよ!
高坂くんたら、やっぱり気にしてたんだ…。」
「おい、高坂くん!あの中の一人は僕の姉ちゃんなんだぞ!」
「わかってますよ、しかし、私には彼女達にホームランを捧げる義務があります…。
そうでないと美の女神への冒涜でしょう…。」
「言ってろ!キザ男!!」
徳川実業の投手牧野は怒りに任せて顔付近のビーンボールを投げつけた!
女子達からキャアと悲鳴が上がるが、彼は大きくのけぞり、冷静にヘルメットを被り直した。
投手牧野は興奮してたが、捕手で四番の千石は冷静だった。
(落ち着け、牧野。この一番は初回にホームランを打ってる。失投は駄目だ…。)
(千石、俺が右方向のホームランを打たれるわけないだろう?ハッタリだ。あいつは俺の決め球のスライダーを狙うつもりだろうが…。)
(早いストレートは想定内ですよ。右方向に流し打つには貴方の外のスライダーがもってこいですからね…。さぁ、天下の徳川バッテリーはどうきますかね…。)
三球、四球と直球をファールにする。スライダー待ちをアピールするにはバッチリだった。
五球目。狙いのスライダーは来た。それはアウトローに逃げて空振りを誘う球ではなく、インロー膝元に落ちてゴロを打たせる球だった。
だが…。
「…私はホームランを予告しましたが、別にライトフェンス越えとは言ってませんよ!」
「カキーン!!」
配球を読んでたかのようなフルスイング!
打球は女子が誰もいないレフトフェンスをオーバーした。
高坂漣の二打席連続ソロで2-2同点。