高坂漣の反撃の狼煙となるソロホームラン。
点数以上のインパクトを与えた。
「あのライト…。足と肩だけじゃないのか…。」
徳川実業ベンチは動揺し、北条学園サイドは大歓喜した。
『高坂くんカッコイイ~!』
ファンクラブの女子も、聖バーバラの三人組も熱狂し、ダイヤモンドも一周する彼に手を振るが、彼は無反応だった。
「ほら、柚子葉ちゃんだっけ?
貴女ももっと応援してくれないと、イケメン王子様は貴女を見てくれないぞ?」
ファンクラブの女子とも、聖バーバラの女子とも距離を取り、ひっそりと応援する朝倉柚子葉に声をかける三好真理亜。
「あ、ありがとうございます。
でも、私はいいんです…。
私なんかが大袈裟に高坂くんを応援したら迷惑でしょうし…。」
「ふ~ん、私としては一人ライバルが減って嬉しいけど~。彼いいわね。顔だけじゃなく、実力も♪真理亜、貴女は高坂くんをどう思う?」
友人の五月からの無茶ぶり。しかし、柚子葉も答えに興味ありそうな反応だった。
「私?私は痩せた男より、もうちょいマッチョがいいかな~?それにああゆう隙の無い完璧超人より、バカっぽさがある方がいいかな~?まっ、年下には興味ないけどね~。」
「あちゃ~、こっちは弟くんを巡るバトル勃発かあ~?このブラコン!」
五月は同級生の中でも一際大人びた真理亜が、弟のことになると態度が変わるのを知っていた。
「どうして弟さんを取り合うんですか~?」
『弥生は黙ってて!』
「ほら、弥生。あんたのお気に入りの9番くんの打席よ。」
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二回の表
徳川実業の攻撃。
一死。ランナー無し。
八番ライト氏家くん。
「べ、別にそんなのじゃないですよ~。」
と否定する弥生に対し、
真理亜と五月は弥生の手を掴んで大きく振らせ、
『かっ飛ばせー!この子の所まで飛ばしてくださーい!!』
と二人で叫んだから、再び両ベンチがざわめく。
「な、何で俺ばっかり応援してくれるんだろ?モテ期?いや、そもそも山の頂上にある全寮制女子校なんて、ただの伝説…?」
八番ながらも、初レギュラーを掴んだ彼。純白ワンピースの制服女子達の存在が、かえって野球に対して気負いせずリラックス出来る効果をもたらした。
「カキーン!」
一、二塁間をゴロで抜ける打球。初打席、初ヒットかと思われたが、予め前よりにポジションを取り、ダッシュと素早い送球で『ライトゴロ』に打ち取ったのは高坂だ。