モトサヤ 23 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

大学の講義なんかは頭に入らず、すっかり仲睦まじく語り合う五反田と熊谷さんの様子を見てるだけで一日が終わった。
俺の不機嫌さを悟ってか、高野さんは心配して俺に声をかけて来てたが、生返事を繰り返すだけだった。
高野さん、すまない。
今はまだ駄目なんだ…。

大学から真壁邸に向かう最中、ようやく契約悪魔のゼパルは口を開いた。

(朝はよく我慢出来ましたねえ?勢いに任せてあの奥さんを抱いてしまうかと思いましたよ。不妊の術を施す準備をしてましたが、何事もなく良かったです。)

「馬鹿野郎!そんな事をすれば全てが水の泡だ!折角、お前の計画通りに進んでるのに…。」

(そうです。
やはりあずささんは「家庭」に執着があり、道長のアパートとその合鍵に安心感を得ました。
しかし、これは彼女をアパートに釘付けにする布石。
あくまで本丸は…。)

「あぁ、一樹の心を動かすことだ。」

****

「ふ~ん、来ないかと思ってたけど。
ちょっと意外だったね。
何しに来たの?
母さんは元気?」

「君に会いに来た。」

「嬉しい冗談を言うんだね。
今日は別人みたいな雰囲気だね♪
例えるなら、う~ん悪魔に取り憑かれたみたいに♪」

「それは間違いだな。
これが本当の俺か、もしくは今までが憑かれていたかだ。」

出迎えられた玄関で靴を脱ぐ為にかがむと、段差を利用して一樹が胸の位置で俺を抱きしめてきた。
「…今は二人きりだよ…。」

「…わかってる。だから来た。
君のお母さんは俺のアパートで、俺の帰りを疑うことなく待っているさ。
でも、全ては…。」

「気兼ねなく僕と過ごす為?
悪い先生だなぁ…。」

「お前には負けるよ。」

一樹は俺の首に絡めた腕を離さず、俺も抱き締め返し、口唇を重ねた。
軽量な彼を軽く抱き上げ、お姫様だっこで二階へと向かう。

ドアを開け、少し乱雑にベットに投げる。

「…怖いよ…。」

「…誰でも最初はな…。」

「…愛して…。愛されたいよ…。一人ぼっちは嫌だ!ずっと僕の僕の先生で居てよ!」

「一樹、お前は誰のものでもない…。だから俺はお前を選んだ。」

「わかってる…。結局これしかないんだよ。時間をかければ母さんも僕の気持ちをわかってくれるよ。本当の愛があれば。
…だから…いいよ…。」

震えながら涙を流す一樹に、今までの大人を馬鹿にした態度は無かった。
全ては順調だった。
父親が早退して帰ってこなければ。(次回最終回)