「母さん、みんなでお茶ぐらいいいでしょう?」
「ええ、折角、先生の大学のお友達にお会い出来たのですからね。」
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どこまで仕組まれてたかわからない。
だが、一樹に母子二人で熊谷さんのマンション付近で行動した方が怪しまれないとの計算があったのは事実だ。
俺や高野さんと遭遇したのは想定外かもしれないが…。
遅くまで営業してるカフェに入り、四人での歓談が始まる。
が、その前にそれぞれが連絡すべき相手に連絡していた。
「母さん、父さんに遅くなる連絡しとくから携帯貸してよ。僕のは電池無いんだ。」
と言って、自動扉近くの入り口に向かう。
しかし、一樹はあずさの携帯で俺にメールを送信してきた。
「大丈夫。僕は先生の味方だよ。任せて。愛してる。(はあとマーク)
「ええ、ストーカー?怖いですね。
一樹の中学でも不審者情報は途絶えることがありませんわ。」
高野さんからの話題は勿論、熊谷さんに付きまとう、俺達とは関係ないストーカーを、俺達に関係ない所で友人の五反田清彦が捕まえたことだった。
「ふ~ん、この前会った時は、てっきり熊谷さんの方が先生の彼女と思ってたのに外れちゃった~♪」
「う、うん。でも莉緒は五反田くんの優しい所もわかってあげれるよ…私なんかよりもね…。」
「高野さんって空手をやられてるのに、どうして畠山先生と同じテニスサークルに入られたのかしら?
もしかして、誰かお目当ての方が居らしたのかしら?」
あずさは一樹の様に感情を隠す事が得意ではなかった。
しかし、この母子が高野さんに興味を無くしたのは、俺に取って最後の希望が消えた事を証明した様なものだった。
「真壁くんのお母さん、人生の先輩に質問です。
ご主人さんとはどちらからアプローチしたんですか?
私は想ってても自分からは何も出来なくて待ってるだけで…。」
高野さんに元気が無く見えるのは、彼女は俺よりも清彦を気にしてたからかもしれない。
そして熊谷さんは、今となっては推測だが俺に好意が…。
だが俺には最初からそんな資格はない。
新たな恋を応援するだけだ。
「僕も知りた~い。父さんと母さんって、周りがうんざりするぐらいに、ラヴラヴだから、どっちが攻めたか興味あるよ。」
高野さんの前で、イヤ、俺とあずさに釘を刺す為に堂々と嘘を吐いた。
自分の父親、即ちあずさの旦那を話に持ち出すことで、俺とあずさは嫌でも今までの情事を思い出させられた。