「清彦、いいか?自分を強く持て!
大切なのはお前が熊谷さんに嫌われるとかじゃなく、今実際に起きている事に対して、お前が彼女を守れるかどうかだ!」
「う、うん。確かにそうだけど…。」
「男なら、結果的に嫌われても惚れた女に体張れよ!」
「そうだよね、道長。僕頑張ってみるよ!熊谷さんにまとわりつくストーカーを捕まえてやるよ!」
(犯人が本当にあの母子のどちらかなら、善良なお友達に道長のやってきたことがバレるんだよ?)
悪魔ゼパルが俺に語りかけた言葉は最もだった。
だが、清彦のはっきりしない態度に俺はいい加減腹が立ち、あずさや一樹くんの事なんか考えられなかった。
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「ホ、ホントに危ない時は助けてくれるんだよね?」
「あぁ、ストーカー野郎が逆上してきたら俺が捕まえてやる。
それに見回りしてるお前の事をご近所さんが通報したら俺と高野さんが証人になってやる。
熊谷さんの親には、それとなく高野さんが話つけてくれてるし。
後はお前が男を魅せるだけだ!」
「そ、それなら君達が事前に熊谷さん本人に事情を話したら…。」
「それだとサプライズにならないだろ!突然現れたヒーローだからいいんだよ。
高野さん、お膳立てありがとう。
あとは俺達でやるから、夜も遅いし帰った方が…。」
「私は中学から空手やってきたんですけど~?
それに遅くなったら、莉緒に泊めてもらうし。
五反田くん、頑張って!
莉緒にも…五反田くんの誠意がわかって貰えるよ、きっと。」
実家住まいの彼女のマンション近くを巡回し、お互いに携帯で連絡を取り合い続けた。
俺は都合の良いことを言いながら、もしストーカーがあずさか一樹くんなら、先に俺が捕まえて闇に葬りたい、と悪あがきする気持ちに気付いた。
(その時の勢いと情熱で我を忘れるのは道長の魅力かそれとも…。)
「プルル!」
携帯が鳴った。高野さんからだ。
「畠山くん、あの時の僕とそのお母さんに会ったよ~。親子で外食した帰りだって。
私達、角のコンビニに居るから来なよ~。
あっ、勿論、莉緒の事は『部外者』には内緒ね♪」
それは全てを見透かされた様な行動だった。
男子中学生が母親と歩いてる時に、顔見知りのお姉さんに声をかけても誰が怪しむだろうか…。
この後、清彦は『別件の』ストーカーを見事に捕まえ、熊谷さんとヨロシクやったそうだ。
そして一樹は悠々とと母親と高野さんを俺の前で会わせた…。