悪魔ゼパルが告げる不吉な予言。
それは真壁の母子ともに、俺の女友達を一方的に妬み、危害を加える可能性があるということだ。
「ゼパル、そうならない為にはどうしたらいい?
俺は自分の不始末で誰かを傷つけたくない!
その為に命を投げ出す覚悟でお前と契約したんだ!」
「わかっている…。
大切なのは相手をコントロールすること。
まずは道長があずさを意のままに操らないことには、更に厄介な坊やに太刀打ち出来ないよ。」
「あずさを懐柔出来る術があるのか?」
「ある。
文明が発達しても、3000年来変わらぬ男と女の『業』には逆らえない。
そう、嫉妬に怒り狂う人妻あずさの感情をコントロールしたければ
1にムード
2にプレゼント
3に君のワガママだ
」
「おいおい、安っぽいナンパマニュアルじゃないんだぜ?
契約悪魔らしく…。」
「その三つを同時に叶えるアイテムが…。。」
「…いや、待て!そんな物くらいで…。」
「勿論、大切なのは渡し方さ。
道長はなるべく彼女を想ってではなく、自分の理由でそうする様に振る舞うんだ。」
「そんなことをすれば余計に…。」
「わかってないな。世の女性は支配されたフリをしながら支配するものだよ。」
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「それ」は半日で完成したが、ゼパルが言うには渡すタイミングが重要らしかった。
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「高野さん、熊谷さんは今日も休み?」
一樹くんと四人で会った日曜以来、友人の熊谷莉緒さんは大学を休んでいる。
「高野さん、理由を知ってるのかい?」
「畠山くん、これ秘密ですよ…。莉緒はちょっと精神的に参ってるみたいでして…。」
「参ってる?どういう風に?」
「莉緒が言うには、追けられてるとか、見られてる様な違和感を感じるんですって。」
まさか…?一樹くんか?あずさか?そんなに直ぐに彼女を特定出来るわけが…。
「莉緒って男っぽいけどけっこうモテますからね」
「あの、道長…熊谷さんのとで…ちょっといいかな…?」
俺と高野さんの会話に入ってきたのは同じテニスサークルの五反田清彦。やや肥満気味ながらもテニスの腕は確かで少し気が弱い所がある。
「どうした?清彦。」
「く、熊谷さんがもしも僕を不審者と思ってたらどうしよう?僕は話しかけるタイミングがわからないだけで…。後ろ姿を見てるだけで…。」
「相談はそれだけじゃないだろう?」
「ぼ、僕以外にも熊谷さんを追ってた奴を見たんだ」