「まぁ、落ち着こうじゃないか。
ふぅ、姿を消し続けるのは半日が限度だね。
オーバーワークは悪魔の主義に合わないな…。」
俺のアパートでくつろぐゼパル。
ベッカムの様な風貌のイケメン悪魔は、俺の冷蔵庫から勝手に缶ビールを頂戴していた。
「飲むのは紅茶だけじゃないんだな?」
腹が立つより、人間臭い悪魔の仕草に親近感を、いや「男」の雰囲気に安心していた。
「モテる奴に限って『男同士で飲む酒が一番だぜ。』なんて嫌味ったらしく言ってたが、今ならその意味がわかるぜ。」
俺もビールを飲み、鬱積した気分を晴らそうとした。
「で、どっちが本命なんだい?ボーイッシュな熊谷さんかい?お嬢様っぽい高野さんかい?
何なら僕の術で君に好意を持たせてあげようかい?」
「やめろ!俺にそんな資格はない!」
気楽に話すゼパルは心底楽しそうだった。
俺も同じ学部やサークルの友達と疎遠になりだしたのは、勿論あずさと関係を持ってからだ。
そして今は一樹くんの問題さえも増えてしまった…。
「道長、これは悪魔とか契約とかで言うんじゃない。
客観的な意見として参考にしてほしい。
早めに手を打たないと、今度はあの可愛い女子学生に危害が及ぶよ…。
…あの坊やなら…やる。」
ゼパルから告げられた衝撃の言葉。
「情愛の妖精」「破局の悪魔」らしい達観した眼差しだった。
「…まさか、一樹くんは俺や彼女達と楽しく会話してたじゃないか?」
「おやおや、坊やの笑顔に隠された嫉妬の感情が見抜けないなんて、道長は坊やのママとの情事で何を学んだのかな?
まぁ、坊やの方は嫉妬してる自分にさえ気付いてない。それだけに歯止めが利かないんだよね。」
「ゼパル、脅かしや冗談はやめろ!」
「ごめん、悪魔は嘘はつかないよ。それが嘘かもしれないけど。
あぁ、それと嫉妬に狂うのは坊やだけじゃないよ。」
と、言った瞬間、メールが。あずさからだ。
「随分回りくどいことするのね。
ミッチーに若い女が居ても私は気にしないって言ったのに!!
一樹と買い物だなんて、コソコソ隠し事しないで。
私、今日のこと許さないから。」
「今日、熊谷さんと高野さんとカフェで喋ってたことが、もうあずさに知れてる!?」
「随分頭のいい坊やだねぇ。母親の前では無邪気に『先生の彼女と会ったよ』何て言ったかもね。
女子学生と自分の母親をぶつけて、共倒れを狙ってるのかもね?」
ゼパルは饒舌だった。続