「こういうのは着たいと思わないのか?」
それから数日が過ぎた日曜日、俺はショッピングモールに居た。
一樹くんに呼び出され断れない俺。
買い物に付き合わされるその形は「デート」そのものだった。
しかし、あずさとの関係と違い、人目を気にしないくていいことに安心感をがあったのも事実だ。
あずさとは彼女の家とホテルしか行ったことがない。
繁華街を歩くことは自殺行為だった。
しかし、中学生の一樹くんと歩いてる姿を見られても「年の離れた兄弟」にしか見られない。
そして…。
(坊やは…誰のモノでもない…まだ…。)
(わかってる!ゼパル。許可なく語りかけるな。)
「う~ん、興味ないわけじゃないけどね。
明らかな婦人服が着たいわけじゃなくて、僕は僕のままで好きな人を好きで居たいだけだよ。
どちらかと言えばあんな店にあるような…。」
派手に化粧したロックバンドとかが着そうな男女兼用でパンクな服が好みらしい。
どうやら一樹くんの主張はあくまで俺だけを求めてるらしい。
ある日突然、クラスの女子や、女教師に恋する可能性もあるから、そこは勘違いするなと釘を刺された。
(立派な坊やじゃないですか。
僕の顧客も彼みたいな子ばかりなら、ノーストレスで仕事が出来るですけどねぇ。
まぁ、道長と違って一樹くんは『悪魔』を必要としないタイプの人間でしょうが?)
(お前は皮肉を言うことしか出来んのか!)
(そう怒るなよ、道長。僕は君とのミッションが楽しいんだ。
イロニー(皮肉)を楽しめるのは男性ならではさ♪
女性は総じてイエスかノーで分けたがる。あぁ、これは『哲学の悪魔』ブエルさんの受け売りだけどね。)
(ゼパル、お前は情愛をコントロール出来るなら、俺をいっそ一樹くん相手に本気にさせてくれないか?
あずさの事で苦しむ感情が無くなるくらいに…。)
(…相手が人妻でも、『後は野となれ山となれ』って心理になれないのは君の好意、いや良心がそうさせるんだろうね。
心が無い獣になってしまえば苦しむことも…昔、カールクリラノースがそんな虎の話をしてくれたっけ?)
(ゼパル、そんな話はいい!出来るのか?)
(悪いけど僕は契約者自身の感情はコントロール出来ない。
出来ないわけじゃないけど、契約の範囲を越えて人間に肩入れし過ぎた悪魔は…砂になるんだ…。)
(そっかぁ…残念。)
「お~い、畠山く~ん。」
俺を呼ぶのは大学の女友達二人だった。
続