モトサヤ 9 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

そして時間が来れば息子の一樹くんは帰宅し、俺は何事も無く、家庭教師としての役目を終えて帰宅しようとする。

「畠山先生、いつも本当にありがとうございます。
さぁ、一樹。先生に挨拶なさい。」

母親に促され彼は礼を言った。大人しい部類の少年だが礼儀正しく、親の躾が行き届いてるのがわかる。

「ありがとうございます、畠山先生。先生の指導があれば、来年の今頃は北条学園の制服が着れそうです!」

屈託の無い笑顔は少年の特権だ。
俺が彼の母親と痛みを伴わない別れを望んでいるのは、一樹くんの未来を何よりも大切にしたい想いが強いからだろう。
家庭教師のバイトは過去にもやったことがあるが、母親のことを抜きにしても彼は良い生徒だと思う。

「そうか、あそこに合格すればいい大学も視野に入る。
先生も一生懸命頑張るから、一緒に頑張ろう!それじゃあな!」

自分なりの男らしい笑顔で真壁邸を後にする。
俺は嘘をついた。
俺が本当に願うのは、母親あずさとの別離だ。
俺の隣で姿を消してる悪魔・ゼパルが俺の願いを叶えてくれたら…。

俺は一樹くんの合格を祝福出来ない。
その時は既に悪魔により不慮の事故死か、魂を奪われて地獄に連れて行かれてるか、はたまたゼパルの力により、あずさと円満に別れて俺は遠くの地に居るか…。
そうだな…せめて俺がいつ消えてもいいような勉強の教え方をしとかないとな…。

「…やはり口ではそう言いながら、この世に未練がありますか?」

俺が住むアパートへ向かう途中、ゼパルが話しかけた。

「違う!ただ大人の事情であの子に迷惑をかけたくないだけだ…!」

「…本当に…貴方みたいな男女が引き返せない恋愛に陥るのでしょうね…。」

「ゼパル!それより次の作戦は?」

「僕もそれを言おうとした所です。
彼女に『不妊の術』をかけるのは?」

「おいおい、彼女は中学生の子供が居る年齢だぞ?俺とも旦那さんとも今さら子供は望まないさ…。」

「ですが世の男性は子供も望まないのに、その原因となる行為を望みますよね?この意味わかりますか?」

「つまり…俺が快楽の為に、彼女の身体を一切気にしない男を演じろと?」

「はい、その為の不妊の術です。」

「しかし…それはあずさの女性としての喜びを奪う…術と言うより呪いだ…!」

その時、苦悩する俺にあずさから電話が。

「一樹の携帯から不審なメールが私の携帯に!『ばらすよ』って一言だけ入ってたのよ!」