犬畜生の日曜日 2~フブンリツ 11 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

母親が俺との散歩から戻るまでに、お嬢ちゃんが帰宅してることを願ったが、無駄だったな。
全く、現代日本の受験戦争ってのはホントに深刻だな…。

お嬢ちゃんよ、手遅れになっても、俺を恨むなよ!俺は契約通り君のお母さんを守らなきゃなんねぇんだからな…。

「貴方、お話が。」

リビングでテレビを観てた父親に、母親が話しかける。
俺の予想が正しければ、この母親は自分の旦那を激怒させてしまうだろう。

「どうしたんだい?」

笑顔で振り向くこの父親に現時点で悪気はない。

「お義母さんのことなんです。
また私の知らない所であの子にお小遣いを…。
貴方からも注意してください!」

父親の笑顔が一瞬で硬直する。
やはり…。

「母さんは母さんの考えがあるんだろう。
孫が可愛いのは当然さ。
それで友達とも上手く行ってるなら構わないじゃないか?」

「羽振りの良さで寄って来る同級生なんて友達ではありませんわ!
お義母さんはわかってませんわ!
お金がなくとも…。」

「ガシャーン!」

「母さんと俺の苦労がわかるか!」

来た!自分の母親を否定された途端に、近くのリモコンを投げつけ、おっ始めやがった!
こいつの『NGワード』は母親だった!

「母さんが俺を歯学部に行かせる為にどんな苦労をして来たと思う!?
たくさんの男からチヤホヤされることしか能の無い、元キャバ嬢のお前に何がわかる!
あぁ、父親もどきの呑んだくれと、確かにお前は気が合いそうだからなぁ!?」

「ご、ごめんなさい!違うの、本当に孫の将来を考える祖父母なら…。」

「口答えするな!
私は我が子に同じ過ちを繰り返さない!
何不自由なく育てて、私の果たせなかった夢、歯学部ではなく医学部に合格させるまで…。」

マザコンに学歴コンプレックス、実父からの負の連鎖。
裕福な家庭の奥様もこれじゃ報われねぇな。

「そしてお前は財力と暴力で自分の論理を押し通すと。
力の無い女子供にだけにな!」

「だ、誰だ!?
どこから声が?」

「夢を忘れた大人は醜いねえ。
『あり得ない』と思い込めば、見えてるものを見ようとせず、自分で勝手に『話すわけない』と思い込んでやがる。」

俺は何もしていない。
お嬢ちゃんに話しかけるのと同じ様に『夫婦の会話』に口を挟んだだけだ。
だが『犬が話すわけない』と思い込んでるこの夫妻には、俺の声だけが響くようだな。
じゃぁ、これはどうかな?

「誰だ!幽霊か?」