犬畜生の日曜日~フブンリツ10 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「…うん…。パパ…もうやめて…。」

寝言か…。
この父親のDVは、夢の中のお嬢ちゃんまで蝕んでやがる…。
どこまで腐ってやがんだ…。
きっとまともに安眠出来ねえんだろうな 。
せめても俺を抱き締めて寝たいわけだ…。
本来なら、父親に感じる恐怖は母親が払拭しなきゃなんねえのに、あの母親のせいで四倍の悲劇だな…。

「ママ逃げて!」

おいおい、どんだけ怖い夢を…しゃあねぇ、悪魔ガミジンから習った夢見の魔法を…。

「う~ん。」

「キャウン!」

苦しいって、お嬢ちゃん!きつく抱き締め過ぎだ!
息が苦しくて、呪文が唱えられねぇだろ!
こりゃ良い夢を見せてやるどころじゃねぇ、ゲホッ、仕方ねぇ…。

「う~ん、おはよう!
何か素敵な朝ね~。
こんなに頭がすっきりして起きたの記憶にないよ。」

「そうか、熟睡出来たならけっこうなことだ。」

「…え?」

「おはよう!お嬢ちゃん」

「キャー!!
何で、人間の姿で一緒に寝てるんですかー!
イヤー!キャー!
変態悪魔さんは契約解除ですー!
変態行為は契約違反です!」

お嬢ちゃんは顔を真っ赤にして枕で俺を叩くが、こっちも殺人の悪魔が少女に窒息死させられたなんて、3000年の恥だし!
人間になって身体を大きくしなきゃピンチだったわけで…。

まぁ、夢見の魔法は効いたみたいだが…。


「ねぇ、起きてるの~?塾に遅れるわよ~?」

「ママよ!騒ぎ過ぎると怪しまれるわ。
早くマルチーズに戻って!」

「わかった。」

****

「じゃあ、パパ、ママ行ってきます。
この子ローリーくんは凄く躾のいい犬だから安心して!
午前の三時限終わったら真っ直ぐ帰ってくるから。」

「はい、行ってらっしゃい。
世話はママに任せて。」

****
何気ない日曜の一ページ。
何の問題も無い、幸せな家庭に映るだろう。
父親はゴルフに株式投資。
母親は海外ドラマにガーデニング。
理想的な夫婦じゃねぇか?

一体誰がこの姿を見て、愛する奥さんに暴力を振るうような主人と思うだろうか?

「ローリーちゃん、お散歩行きましょうか?」

変身魔法も疲れるが、犬のフリをするのはもっと疲れる。俺は悪魔だからな。

だが収穫はあった…。

「あら、奥様、お宅のお嬢様とウチの娘達が繁華街で随分豪遊したと…。」

お嬢ちゃんが?まさか…?

「申し訳ございません。
主人の母が孫に甘く、安易にお小遣いを与えて」

姑か…。