※以下、ネタバレ注意
「…いい話ですね…。
確かに、鬼が自分の親を金棒で叩いてるのを見て、沈黙を守れるわけないわ…。
そんな物で手に入れた財産もまた幻だと思う。」
「最後に一軒家と畑を与えたのが『身の丈』なんだろうな。
まぁ、中国古来の『杜子春伝』はもっと残酷で救いがないが、それをアレンジしたのが芥川龍之介の力だな。」
白いマルチーズが芥川龍之介を解説する姿に、私はクスりと笑い、物語と相まって親への憎しみが和らいだ。
「やっぱり…幸せって、お金や医学部とかじゃないし、悪魔との契約で無理矢理不幸を断ち切るものじゃないのかな…?」
「お嬢ちゃんがその答えを早急に出す必要はねぇさ。
だが、お父さんとお母さんの問題は待ってくれないほどの状況だな。」
グラシャ=ラボラスさんは、私に明るい未来を示して「希望を胸に」なんてことを言いませんでした。
それは彼が悪魔だからかはわかりません。
「とりあえず…私は私の出来ることをします。
特に今日は貴方のおかげで書くことがいっぱいだわ!」
と、私は腰掛けてベットから立ち上がり、学習机に向かった。
「何でえ、まだ宿題やってなかったのかい?」
「違います、日記です。」
「日記?」
「私ね…ホントは医者になりたくないんです。絵本を書く仕事に就けたらいいなって。
パパやママにも言ってないことを学校で相談したら、『物書きは毎日、日記を付けなさい』って言ってくれたんだ。」
「へぇ、いい先生も居るじゃねぇか?」
「ううん、用務員のおじいちゃんだよ。クラスメートや家の事で悩んでると、何も言わずお茶を淹れてくれたんだ…。」
「そうか。で、こっちの棚が過去の日記帳か?」
「か、勝手に見ないでください!女の子のプライバシーです!」
いくらマルチーズの姿の悪魔でも、言葉が解る以上、恥ずかしいです。
「依頼主の調査の範囲さ。
と、言ってもこの肉球はページがめくりにくいな…。」
と、言った瞬間、彼は赤紫色の光に包まれ…。
「変身魔法は苦手だ…。」
大好きな映画「ニックオブタイム」のジョニー・デップみたいな男性が

私の目の前に!
「気にせずにお嬢ちゃんは日記を書いてな。」
気にします!続