「大谷さん、もういいだろ?ホワイトデーの返事を聞かせてくれ?」
「…返事せーへんのが返事や思いますけど…。
部活あるんで、ほな。」
修了式の今日、残念な通知表をカバンに入れて部活に向かおうとした所を、クラスメートに捕まってもうた。
相手は男子テニス部の雨森信介くん。
バレンタインデーにクラスの男子達に女友達のグループでチョコレートをあげたら(殆ど『配った』に等しい)、ホワイトデーにこれ見よがしにウチに花束渡して「好きだ!」なんて言いよって!しかも昼休みの教室でわざとらしく!
ウチを笑いもんにすんのがそんなに面白いか?
あんまり腹立つから無視しとったけど、強引に校舎裏まで連れてこられて…。
「それでも!大谷さんの返事が聞きたいんだよ!」
野球部やサッカー部と違って、チャラチャラしたんがテニス部に多いけど、こいつはその代表格やな。あんまええ話は聞かん。
「フツーの女に飽きたら、ウチみたいなんを珍獣扱いか?
ウチは笑えん冗談が一番嫌いや!!
付き合うとか以前の問題や!サイナラ!」
どうせウチは可愛いないわ。
作り笑顔で
「お友達からでいいなら~。」
なんて死んでも言えへん。
だからこんな男が寄って来て、さやかは柿崎先輩みたいな優しくて誠実な彼氏(?)が居るんかと思うたら情けなぁなるけど…。
とにかく今は逃げたい!
「待てよ!」
「…嫌…。」
強引に手首を握られて邪魔される。
いつものウチやったら反対の手で顔面殴ってんのに、何やの?怖くて力が…。
竜!助けて!何で今ここに居らへんの?
手首を握ってる反対の手の指が、ウチのうなじから襟足に触れられる。
いやぁ気持ち悪ぅ。
「君は自分で自分の魅力がわかってない。
短い髪、乱暴な言葉遣い、サッカーの才能。
どんなに男みたいに振る舞っても、俺は君の女の部分を愛してる。
今、わからせてやろうか?」
「や、やめてください。
好きでもない人からそんなことは…。」
気付けば涙が出てた。
こんな時にだけ女らしくなる自分に腹が立つ。
彼も泣き出したウチを見て、流石に動揺して…。
「赤松だったら許してたのかよ!?
チャンスがある限り諦めねーぞ!
それでも俺は好きなんだよ!」
と、言い捨てて去った。
竜も雨森くんも良く知らん人から見たら「自信家」なんやろう。
でもわかった。雨森くんは自信の無さを、他人の心を奪うだけで誤魔化してるだけや。
私の竜とは違う